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サイクリンはめぐる

Nature Reviews Cancer

2002年9月1日

有糸分裂からの脱出には、サイクリンの分解と、それに共同したサイクリン依存性キ ナーゼ(CDK)活性の低下が必要である。酵母ではS期サイクリンClb5の分解が必須で あると考えられていた。しかし、有糸分裂からの脱出を調節するのにClb5が重要かど うか、疑問を抱かせる研究報告がNatureに寄せられた。

エル胚では1つのオシレーターが細胞周期を管理している。この負のフィードバッ クをもつオシレーターはS期とM期を交互に変換し、後期促進複合体(APC)とよばれ るユビキチン‐タンパク質リガーゼの制御を伴う。APCは、サイクリンを動員す るCdc20とよばれる分子によって活性化される。CDKは、Cdc20-APCをリン酸化するこ とでその活性化を促進する。このCdc20-APCは、サイクリンの分解と有糸分裂からの 脱出の引き金となる。結果として起こるCDK活性の低下によってAPCが不活性化し、サ イクリンは再び蓄積可能となる。

かしながら体細胞と酵母の細胞周期は、もっと複雑である。なぜなら、細胞の増殖 と分化に必要なG1期が含まれているからだ。G1期調節は第二のオシレーターによって なし遂げられている。第二のオシレーターは、Cdc20の代わりにCdh1とよばれるAPC活 性化サブユニットが用いられる点ではじめのオシレーターとは異なっている。

dh1-APCはCDKによって阻害される。このことは、有糸分裂後期にはCDKの不活性化に よりCdh1-APCが活性化されることを意味する。Cdh1-APCは次にG1期(模式図参照)を 通してサイクリンの分解を続行する。

lb5サイクリンが分解される必要があるかどうかという問題に取り組むため、Wasch とCrossは酵母株CLB5Δdbを構築した。この細胞中のCLB5遺伝子は、 Cdc20-APCの標的となるClb5の破壊ボックス配列を欠失している。しかし、この細胞 は有糸分裂からの脱出には何の欠陥も見られず、Clb5のタンパク質分解は必要でない ことが示唆された。有糸分裂後半におけるCDK活性のさらなる減少に応答するCDK阻害 因子であるSic1を欠失したCLB5Δdb細胞でも脱出が起こった。このことは、 有糸分裂からの脱出はClb5分解とSic1のどちらがなくても進行することを示している。 次にWaschとCrossは、分裂期サイクリンClb2がCdc20の標的となりうるかを解析し、 CLB2Δdb酵母細胞が有糸分裂から脱出できないことを明らかにした。したがっ てClb2は、有糸分裂からの脱出が起こるために分解される必要のあるサイクリンなの かもしれない。

前の研究でCdh1とSic1を欠失した細胞は生存不可能であることが明らかにされてお り、両タンパク質が有糸分裂からの脱出に必須で、しかもCdh1-Sic1オシレーターは もっと重要な制御因子であるかもしれないことが示されている。対照的に、Wasch とCrossは、これらのタンパク質を欠失した細胞が際立った欠陥もなく有糸分裂から 脱出し、弱々しくはあるが確かに生存することを発見した。しかし、それらの細胞に は不安定なG1期に関連したいくつかの異常な点が見られた。この発見は、Clb2分解 にCdc20オシレーターが重要な役割をもつことも強く示している。

たがって、Clb2のような分裂期サイクリンの分解は、有糸分裂からの脱出にとって 重大である。Cdh1-Sic1オシレーターはG1期の安定性に重要なので、Cdc20 とCdh1-Sic1オシレーターは相補的に働いているように見える。

doi:10.1038/fake854

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