Research Highlights

遺伝子ハンター

Nature Reviews Cancer

2005年8月1日

肺癌は世界中で癌死亡の主因となっているが、その成因をメディエートする遺伝子欠損はほとんど見つかっていない。Ron DePinhoらは最新号で、高解像度の比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)と遺伝子発現プロファイリングとを併用して、癌遺伝子候補をもつ遺伝子座をいくつか特定している。

非小細胞肺癌(NSCLC)が肺癌症例に占める割合は75 %を超えており、そのサブタイプとして最も多いのが、腺癌および扁平上皮癌(SCC)である。DePinhoらは、まず腫瘍サンプルを用いて反復的な染色体の獲得と喪失の領域を特定し、次に、その染色体異常とコピー数による遺伝子発現の変化とを結び付けて考えることによって、上記腫瘍の遺伝的根拠を明らかにしようとした。

DePinhoらは、NSCLCサンプル44個の腫瘍サブタイプを比較するなかで、染色体領域3q26−29が唯一、コピー数の変化を来しており、それがSCCサブタイプに特異的であることを突き止めた。この遺伝子座については、以前にも頭頸部SCCで増幅がみられたと報告されている。では、この領域のどの遺伝子が、SCCの発生に寄与しているのだろうか。DePinhoらは、既知の扁平上皮細胞分化調節因子である p63がこの遺伝子座にあり、SCCサンプルでのみ過剰発現しているのを発見した。この遺伝子が過剰発現しているマウスは、重度の扁平上皮化生を来すことから、p63はSCCの癌遺伝子候補として有望である。

3番染色体領域が増幅している以外に、NSCLCサブタイプ間に大きな差はなく、腺癌およびSCCは、共通の肺幹細胞または前駆細胞から生じているのではないかと考えられる。DePinhoらはこのほか、NSCLCデータセットと、最近発表されたほかのCGHデータセットとを比較し、 8p12および20q11にあるアンプリコン2個が、NSCLCと膵管腺癌とに共通していることを突き止めた。腫瘍サンプルで増幅および過剰発現が認められた上記領域の遺伝子には、以前に乳癌での増幅が認められているWHSC1L1と、紡錘体チェックポイントでオーロラA機能を調節するTPX2とがあった。以上のように、この技術は、肺癌の遺伝的根拠を明らかにする重要な新候補を生み出している。

doi:10.1038/nrc1679

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