Research Highlights

肺癌抑制因子

Nature Reviews Cancer

2005年10月1日

染色体の3pおよび1pの欠失は、ヒト肺癌に認められる突然変異のうちで最も頻度の高いもののひとつである。しかし、今日まで研究されてはきたが、この領域の候補遺伝子がマウスモデルにおける腫瘍抑制因子であることは判明していない。Hollanderらは最新号で、Xpcの欠失がマウスの肺癌を引き起こすことのほか、Gadd45a の欠失が腫瘍進行を助長することをも明らかにしている。

XPCおよびGADD45Aはそれぞれ、ヒトの3pおよび1pにあることがわかっており、いずれもヌクレオチド除去修復に関与している。ヒトのXPC多型はこれまで、発癌リスクに関連するとされており、色素性乾皮症があれば、XPCの機能喪失突然変異が皮膚癌を引き起こす。Hollanderらはこれを根拠に、XpcまたはGadd45aのいずれかがホモ接合のマウスのほか、二重変異マウスおよび対照マウスを用いて、24カ月間での肺癌発生率を検討した。生きているマウスは、不調を来すかまたは24カ月が経過した時点で殺処分し、肺の腫瘍を計数して病期分類した。

Xpc-/-マウスは、腺癌まで進行したものはほとんどいなかったものの、全匹が肺腺腫となった。ところが、対照マウスおよびGadd45a-/-マウスには、腫瘍形成の証拠が認められなかった。二重変異マウスは、ほとんどの腫瘍が腺癌に進行していた。以上の研究結果からは、Xpcは腫瘍抑制因子であるが、これが消失しても進行するには不十分であることがわかる。これに対してGadd45aは、進行の予防に関与している。

Hollanderらは、肺癌と相関していることがわかっているほかの因子にも注目した。Pas1およびPar遺伝子といったほかの感受性マーカーの多型は、上記マウスの腫瘍発生率とは相関していなかった。また、この腫瘍で常にKRasが変異していたわけではないのは、Xpc不活化の結果ではないかと考えられた。

ヒト肺癌の研究からは、ほとんどの腫瘍の染色体3p上にXPCのフランキングマーカーがないことがわかっている。これに対して染色体1p上のGADD45Aフランキングマーカーは、肺腫瘍では一部に欠失が見られるのみであったが、ほかの多くの腫瘍でも欠失していた。

肺癌の主な原因は、タバコの発癌物質である。この発癌物質よるDNA損傷を修復すると考えられる肺癌抑制遺伝子の発見は、肺癌発生の機序に新たな洞察をもたらすものである。

doi:10.1038/nrc1725

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