Research Highlights

痛みを緩和する

Nature Reviews Cancer

2005年12月1日

骨は前立腺癌からの転移を臨床的に検知しうる唯一の部位であることが多く、通常は骨痛となって現われる。この疼痛を放射線治療、化学療法、ビスフォスフォネートおよび鎮痛薬といった現在の方法でコントロールすることはきわめて困難であるため、新しい治療法が必要とされる。Patrick MantyhらはCancer Researchで、神経成長因子(NGF)に対する遮断抗体が、前立腺癌が骨に転移したマウスモデルの骨痛を減弱させると報告している。

Mantyhらは、イヌ前立腺癌細胞をヌードマウスの大腿骨髄腔に注入した。脚をかばう、縮めるといった腫瘍性疼痛による行動は、注入の9日後から観察され始め、19日後に殺処分されるまでの間に増加した。ヒトの場合と同様に、顕著な骨形成および骨破壊が見られ、腫瘍のある区画で新たに形成された骨の辺縁には、前立腺癌患者に特徴的な波形が認められた。

前立腺癌細胞の注入または擬似注射から7、12、17日目に抗NGF抗体を腹腔内注射したところ、脚をかばったり、自発的に縮めたりする時間が大幅に短縮された。この疼痛減弱作用は、マウスに硫酸モルヒネ(骨痛の治療によく用いられる)を投与した場合よりも大きかった。Mantyhらは、この抗体が特に有効である理由として、骨に分布する神経線維の大部分がニューロトロフィン受容体TRKA(NTRK1でも知られる)およびp75を発現すること、NGFがこれらの受容体を介して末梢の疼痛受容体を感作および/または活性化していることを挙げている。

処置による影響は、骨形成、骨破壊、腫瘍増殖のいずれにも見られなかった。処置マウスの皮膚または骨の感覚神経線維および交感神経線維の強度や密度が抗体によって変化することはなく、触覚感度にも熱感度にも変化はなかった。この抗体は血液-脳関門を通過しないと考えられるため、中枢神経系に対する有害作用が生じる可能性は低い。

このように、抗NGF療法は高用量のアヘン剤よりも副作用が少なく、また骨転移を来した前立腺癌患者の多くは診断後も5年以上生存することから、長期的な骨痛コントロールの可能性は、生活の質を大幅に改善させると思われる。

doi:10.1038/nrc1764

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