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死の二本立て

Nature Reviews Microbiology

2005年8月1日

肺炎連鎖球菌は、異なる期間に、機能的および形態学的に異なる2つの経路で脳由来内皮細胞にプログラム細胞死を誘導することが、最近のJournal of Clinical Investigationに発表された。

一般に、肺炎連鎖球菌は上気道の片利共生微生物であるが、血液脳関門を越えて侵入すると急性髄膜炎を発症することがある。抗生物質が有効ではあるが、肺炎球菌による髄膜炎は致死率および罹患率が高い。ベルリンのCharité大学医学部のJoerg R. Weberの率いるグループは、ラットおよびマウスから単離した脳微小血管内皮細胞(BMEC)をin vitroでのモデルとして用い、肺炎球菌が血液脳関門の内皮細胞に損傷を及ぼし死に至らしめる機構を解析した。

生きた肺炎連鎖球菌は迅速にアポトーシス様のプログラム細胞死(PCD)を誘導し、BMEC単層は12時間以内に完全に破壊されることがわかった。肺炎球菌が分泌する神経毒、H2O2および肺炎球菌溶血素(pneumolysin)を枯渇させるとPCDが低下することから、この過程はこれらに依存していた。ミトコンドリアが損傷を受けると、ミトコンドリアからアポトーシス誘導因子(AIF)が細胞質に遊離される。AIFは他の細胞において肺炎球菌による細胞死を実行させることが示唆されている。生きた肺炎連鎖球菌がカスパーゼを活性化することはなく、このPCD機構はToll様受容体(TLR)の存在に依存しなかった。

さらに、肺炎球菌細胞壁(PCW)は、BMECにおいて古典的アポトーシスを誘導し、核を完全に凝縮し断片化することが明らかにされた。アポトーシスは先天性免疫応答の重要な受容体であるTLR-2、そしてカスパーゼ類(特にカスパーゼ-3およびカスパーゼ-8)の活性化を通して誘導されていた。この過程は生きた肺炎連鎖球菌により誘導されるPCDよりも長い期間を通して行われ、その結果髄膜炎からの回復中の内皮およびニューロンの修復が中断されることがありうる。

これらをまとめると、髄膜炎の急性および長期的損傷には2つの経路が寄与している。PCWにより誘導される機構は治療法を考える上で意味がある。すなわち、細胞壁を標的とする抗生物質により肺炎連鎖球菌を殺すことができるだろうが、それにより細胞壁の残渣が放出されることで炎症および組織破壊も一層進行してしまう。

doi:10.1038/fake753

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