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よりどりみどり

Nature Reviews Microbiology

2004年1月1日

Rhodopseudomonas palustrisは紫色の光合成細菌でさまざまな環境条件で単離されている。この微生物の生息を成功させる鍵となったのは並外れて多様な代謝経路の存在である。R. palustrisは光、無機化合物および有機化合物を利用してエネルギーを産生ことができる。また、有機化合物から、およびCO固定により炭素を得ることができ、酸素があってもなくても増殖し、さらに、窒素固定もできる。R. palustrisのゲノム配列がNature Biotechnologyに発表され、この細菌が環境の変化に応じてさまざまな代謝能力を協調させて作用するしくみの解明に向けての重要な一歩が踏み出された。 R. palustrisのゲノムは5.46Mbの染色体と8.4kbの環状プラスミドからなる。塩基配列の解析より、微生物が与えられた種類の代謝系をかなりの適応性で利用し、得られる炭素、窒素、光、酸素の変化を巧みに利用するために、非常に多くの遺伝子が存在することがわかった。3種類のニトロゲナーゼ、複数の芳香族分解経路、4種類の集光性(LH)-2複合体および複数の酸化還元酵素をコードする遺伝子が明らかにされた。さらに、R. palustrisは325個もの輸送系遺伝子をコードしており、ゲノム全体の15%がこの活性に充てられている。他の細菌では一般にゲノムの5〜6%が輸送遺伝子であることから、R. palustrisは環境から多様な化合物を感知し活用できるよう十分に備えていることが示唆される。このように多様な代謝の選択肢があることから、細菌は生存し増殖するために環境条件の変化を迅速に感知し遺伝子発現を適切に調節できることが不可欠である。そのために、R. palustrisは全ゲノムの9.3%を調節に当てている(ほとんどの自由生活細菌では5〜6%であるのに対して)。その中には、63個のシグナル伝達キナーゼおよび79個の応答レギュレーターレシーバドメインが含まれている。 R. palustrisゲノムが利用できるようになり、研究者は微生物が多くの代謝能を選択し統合して調節するしくみを研究する足場ができた。これらの過程を解明し最終的には利用することによって、R. palustrisがバイオテクノロジー分野で活用できる可能性が現実化するであろう。水素生成の生体触媒としての開発、微生物を利用したバイオレメディエーションを介する環境回復の効果的な支援を最大限に期待できる方法の工夫などが考えられている。

doi:10.1038/fake737

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