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BCG-進行中の研究

Nature Reviews Microbiology

2003年5月1日

ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)baille Calmette-Guerin株(BCG)は世界中で広く使用されているワクチンの一つであり、ある種の小児型結核では発病率が約70%低下している。しかし、成人の肺結核にはほとんど効果がなく、毎年200万人が死亡しており、ワクチンの早急な改良が必要となっている。BCGワクチンの効力が低下する理由のひとつには、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に対する予防反応を誘導する抗原がBCGワクチン中に不足しているためと考えられる。実際、毒性を減弱させたBCGワクチンは元々毒性を示すウシ型結核菌株を何度も継代して得られたものであり、毒性を減弱する過程で多くのコード配列を失ってしまっている。これらの失われた配列の中には、RD1領域として知られる9つの遺伝子が含まれている。Nature Medicineの報告にあるように、Pymたちは遺伝子座のRD1領域に存在する遺伝子がESAT6として知られる抗原の分泌に必要であることを示している。ここで、ESAT6とは、機能不明であるが強力なT細胞反応を刺激するタンパク質のことである。さらに、RD1領域を置き換えたリコンビナントBCG株を動物モデルに接種したところ、結核菌感染に対する予防効果が改善されたと報告している。

BCGワクチンの効力は消失した結核菌抗原を再導入することで改善されるという仮説に従い、著者たちは免疫学的に有効なT細胞抗原の中でもESAT6ファミリーの分泌について、その遺伝学的根拠を解明しようと試みた。そして、RD1領域のすべての遺伝子クラスターが、ESAT6およびその結合パートナーであるCFP10を正常に分泌するために不可欠であることが判明し、このことは近隣遺伝子が特定の分泌系をコードすることを示している。ESAT6の分泌(おそらくCFP10の分泌についても)は、最適なT細胞反応を誘導するために必須であり、細胞内で抗原を過剰発現するリコンビナントワクチン株では著しく特異的な反応を誘導しなかった。

RD1領域を含むリコンビナントBCG株を接種した動物モデルでは、結核菌の噴霧に対して、良好な予防効果が誘導された。興味深いことに、ワクチンを接種した動物の脾臓では、細菌性負荷が著しく低下していた。これは、病原菌が最初の感染部位から伝播するのを制止する能力に改善が現れたことを意味する。一次結核は主に肺の中葉と下葉に起こり、無症候性なことがある。最も一般的な病変部である肺の上葉に病巣が現れるには、血流を介した移動が不可欠である。また、一次結核部位からの伝播の過程を阻害するワクチンは、結核進行にも著しく影響する。

結核菌に対する予防効果を強化するRD1領域の能力を説明するような正確な機序は、解明されていない。より強力なCD4+T細胞反応を誘導する二つの分泌型抗原(ESAT6およびCFP10)は、おそらく宿主中でワクチン株を維持する作用も備え、このような抗原の存在がワクチン効力を向上させるのに重要と考えられる。結局、あらゆるリコンビナントBCGワクチンをこのように修飾する理由は、RD1領域の再導入後に著しい予防効果が認められたためであり、また、最近ではBCGワクチンの効力をさらに向上させ、結核菌が従来備えていたが消失してしまった免疫学的に優れた抗原を同定するための研究が行われている。

doi:10.1038/fake733

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