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Nature Reviews Molecular Cell Biology

2005年7月1日

エンドサイトーシスの際にクラスリン被覆ピット(clathrin-coated pit、CCP)からクラスリン被覆を持つ小胞(clathrin-coated vesicle、CCV)が形成される様子は、今や生細胞画像化の手法を使って観察できるようになった。こうした観察ビデオは超大作映画というにはほど遠いが、Merrifield, Perrais とZenisekはこの方法を使ってCCPの陥入と分離が緊密に共役して起こり、アクチンの重合がそこで重要な役割を担っていることを明らかにした。

この研究で、Merrifieldらはトランスフェリン受容体(エンドサイトーシスのマーカー)の細胞外ドメインにsuper-ecliptic phluorin(pH感受性の緑色蛍光タンパク質変異体)を融合させた(Tfnr-phl)。super-ecliptic phluorinは、pHを7.4から5.5に変化させると蛍光のほぼ完全な消光が起きる。著者らは次に、蛍光ラベルしたクラスリンを持つ細胞にこのTfnr-phlを導入し、Tfnr-phlの大部分がクラスリン被覆「構造」(CCS)部位に存在することを見出した。細胞外部のpHを7.4から5.5に切り換えると、全てではないがほとんどの蛍光が消光した。酸性になっても蛍光を発するTfnr-phl部位も少数存在し、これらはCCSのところに突然出現した。この出現が観察された一連の画像中での最初のコマは「分離瞬間」とされた。そしてこの実験プロトコルを使って、生細胞の膜を越えてCCVが出現するところを示すすばらしい動画が撮影できたのである。

CCPが複数回のCCV形成を行えるかどうかは未解決のままだったので、Merrifieldらは画像観察をしている間にde novo形成されたCCPと、観察の最初からすでに存在していたCCPについて調べ、CCVは新たに形成されたCCPと既に長時間存在しているCCPの両方から成長することを明らかにした。さらに、いくつかのCCSでは複数回のCCV分離が観察されることがあり、それらは速度論的性質が同じであることもわかった。しかし、CCVの分離が起こるごとに、元あったTfnr-phlパッチ全体の蛍光の一部しか含まないTfnr-phlスポットが生じた。また、CCV分離では、それ以上のCCV分離が起こらない、つまり「最終回」にあたるものがあった。これはおそらく全てのCCPがとりこまれてしまったか、あるいはその場所がCCV分離の最終回を行っていたところだったのだろうと考えられた。

また別の問題は、CCPが細胞膜から離れるナノメータースケールの動きが、CCV分離の前と後のどちらで起こっているかであった。照明技術と細胞を入れた緩衝液のpHを周期的に変化させる手法を組み合わせて、著者らは分離とクラスリンの膜からの移動について測定を行った。CCPが細胞膜から離れる動きは、膜が分離するほぼ40秒前に開始されるとわかり、陥入の際の平均的な移動距離はほぼ40 nmであった。

さらに、もう1つ未解決の問題、つまりアクチンの重合は切断のどの時点で起こるのかという問題が検討された。Merrifieldらはアクチン結合タンパク質であるcortactin を蛍光標識して、切断部位でTfnr-phlとともに観察できるようにした。膜の分離が起こると予想される箇所へのcortactinの動員は、分離のかなり前に始まったが(これもやはり切断のほぼ40秒前から始まった)、cortactin動員のピークは膜の分離が起こる時点に一致していた。ラトルンキュリンBを使ってアクチンの重合を阻害すると、CCSでのさまざまな動きは阻害され、CCVの分離は著しく少なくなった。つまり、今回の研究は、CCPの移動と分離は本来協調して起こっており、アクチンの重合はCCPの出芽部分をそれが形成された場所から物理的に切り離すのに使われていることを示しているのである。

doi:10.1038/fake581

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