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クラスリンの樽を作り出す

Nature Reviews Molecular Cell Biology

2004年12月1日

クラスリン被覆を持つ小胞は細胞内膜輸送に不可欠である。このクラスリン被覆に関する新たな知見が、Grigorieff、 Harrison、 KirchhausenおよびWalzらがNatureに発表した2つの研究から得られた。

クラスリンは、中央のハブから放射状に伸びる3つの重鎖がトリスケリオン(三つ巴型の構造)を作り、トリスケリオンが集合してクラスリン被覆あるいはクラスリン格子が組み立てられる。重鎖である「足」には、ハブの近くの基部セグメント、その先の「膝」に続く遠部セグメント、さらに先の「足首」と「連結部(リンカー)」、および末端ドメインが含まれる。以前の研究から、組み立てられたクラスリン格子中ではトリスケリオンのハブが各頂点に位置し、隣接する3つの頂点に向かってそこから基部セグメントがやや内向きに突き出されていることがわかっている。足は「膝」のところで曲がり、そこから先の部分は隣の頂点に向けて突き出している。頂点の中央にあるトリスケリオンのハブの下部には、それぞれ別の頂点から伸びてきた3つの足首が集まり、その末端ドメインは内向きに伸びている。

最初の論文で、Fotinらはウシ脳由来のトリスケリオンとアダプタータンパク質複合体を使ってin vitroでクラスリン被覆を再構築した。アダプターはクラスリンと小胞の積み荷を連結する役割を持つ。低温電子顕微鏡を使い、Fotinらはクラスリンの作る6角形を組み合わせた形のバレルを分解能7.9Åで観察した。また、結晶構造とホモロジーモデルを電子密度地図に当てはめることで、重鎖のアミノ酸1,675個にわたる部分をトレースした。

さらに、重鎖のC末端領域のヘリックスからなる3本足(tripod)構造も明らかにされた。この構造は各トリスケリオンのハブから内向きに突きだし、そこから2つ離れた頂点を作っているトリスケリオンから伸びてきた足首とハブの下で相互作用している。この「足首の添え木」があることが、各頂点での「ハブの組み立てを一様にする」のを助けているらしい。つまり、どのハブも、3本足構造、頂点から放射状に伸びる3本の基部セグメント、すぐ隣の頂点にあるトリスケリオンから伸びた遠部セグメント、および3本足構造の基部で足首が作る三角形から構成されているのである。

Fotinらは、全体的な組み立てやトリスケリオンの並び方が本来のバレルと同じである「ミニ被覆」の構造も決定した。クラスリンはさまざまな曲率を持つ構造(被覆)を形成できる。著者らは本来のバレル構造とミニ被覆を比べることで、どうやったら曲率の異なる構造ができるかを明らかにした。曲率は、頂点の組み立て方を変えるのでなく、基部セグメントと遠部セグメントの重なっている部分の交差角度を変えることで変更可能なのである。

第二番目の論文で、著者らはauxilinのC末端断片と結合したクラスリン被覆をin vitroで組み立て、その構造を低温電子顕微鏡を使って決定した。70-kDa熱ショックコグネイトタンパク質(Hsc70)はクラスリンの被覆を解体させる働きを持つが、auxilinはこのHsc70を特異的に移動・集合させる補助シャペロン分子(co-chaperone)である。auxilinはクラスリン格子内部に結合して、トリスケリオン末端ドメイン、2つの足首と「足首の添え木」の一部に接触していることがわかった。auxilinの結合しているこの部位は被覆を安定化するのに重要である。ここにauxilinが結合すると重鎖の接触状態が乱される。著者らは、auxilinがこのような局所的なひずみを作り出すために、近くのC末端セグメントが足首と相互作用できなくなり、露出されたセグメントにauxilinがHsc70を移動・集合させて固定・隔離するのだろうと考えている。局所的な不安定化がこのようにして起こった結果、被覆が解体されるのではないだろうか。

doi:10.1038/fake574

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