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樹状突起棘の形態に注目

Nature Reviews Neuroscience

2005年7月1日

ここしばらくの間、樹状突起棘の頚部が果たす役割についての論争が続いているが、このほど河西春郎たちの研究グループが、論争を決着に近づける研究成果を発表した。棘頚部の形態が、樹状突起内Ca2+シグナル伝達、したがって長期増強における極めて重要な決定因子になっているという結論を示したのだ。

シナプス可塑性の制御は、細胞内Ca2+濃度([Ca2+]i)の上昇に依存しており、この上昇には、NMDA(NメチルD【特殊文字:スモール・キャピタル】アスパラギン酸)に感受性のあるグルタミン酸受容体が関与している。シナプスの機能と可塑性は、シナプスの構造に依存すると考えられており、長期可塑性は、棘が小さい方がより効率的に起こるらしい。しかし、棘頚部の構造を含む棘の構造とNMDA受容体(NMDAR)依存性Ca2+シグナル伝達の関係は、これまでのところ、実証されていない。

河西たちは、2光子励起法を用いて、グルタミン酸化合物を放出し、活性化させて、ラットのCA1錐体細胞のさまざまな種類の樹状突起棘でグルタミン酸を特異的に放出し、NMDARに依存する長期可塑性を選択的に誘発した。そして、この方法とCa2+画像法を組み合わせて、錐体細胞における樹状突起棘の構造とNMDARが関与するCa2+シグナル伝達の関係を調べた。

まず、河西たちは、樹状突起棘においてNMDARの関与によって発生する電流の程度を調べ、そこからの推測により、機能性NMDARの発現量と棘頭部の容積との間に正の相関があることを明らかにした。次に彼らは、棘頚部の構造がCa2+シグナル伝達に与える影響を調べた。そして、樹状突起棘が小さいと頚部が細くなる傾向があり、そのため、樹状突起本幹へのCa2+の流れが妨げられ、その結果、頚部の大きな樹状突起棘よりも棘内区画での[Ca2+]iの上昇が大きくなることが判明した。

樹状突起棘の構造についての理解を深めるには、さらなる研究が必要だが、今回の研究結果からは、樹状突起棘の構造とシナプス可塑性の間に新たなつながりがあり、樹状突起棘の頭部と頚部が、NMDAR関与性Ca2+シグナル伝達の制御においてそれぞれ独自の役割を果たしていることが明らかになった。棘頭部の容積は、シナプス伝達の制御にとって重要であり、これは、機能性グルタミン酸受容体の発現レベルの変動によっている可能性がある。これに対して、棘頚部の具体的な構造は、樹状突起シナプスでのCa2+シグナル伝達に直接影響すると考えられることから、シナプス可塑性の選択的誘発における決定因子となるのだ。

doi:10.1038/fake535

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