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神経変性疾患と戦う研究者の味方

Nature Reviews Neuroscience

2005年1月1日

ハンチントン病は、ハンチンチン(HTT)タンパク質のポリグルタミン(polyQ)リピートの伸長が原因となっている。この病気の特徴は、ニューロン内での変異型HTTの凝集による沈着物(封入体)の形成、そして線条体ニューロンと皮質ニューロンの選択的な死滅だ。ところで、この封入体と神経変性との関係については、封入体が神経変性の原因や進行にかかわっているのか、封入体が神経変性の抑制に役立つ働きをするのか、それとも封入体は神経変性に付随して形成するのかで、活発な議論がある。このほどFinkbeinerたちは、革新的な研究方法で、この論争を決着の方向に導くような証拠を得た。封入体は、神経変性疾患との戦いにおける確固たる味方であることが明らかになったのだ。

Finkbeinerたちは、個々のニューロンの生存状態、ニューロン内での変異型HTTの濃度、そして同じニューロン内での封入体の形成を数日間にわたって追跡観察できる巧妙な自動顕微鏡画像システムを開発した。この装置は、ニューロン死のリスクの経時変化を解明する上で役立った。

この研究では、HTTのpolyQ伸長が長くなるとニューロン死のリスクが高まるという関係が明らかになった。この関係は、時間が経過しても変わらなかったため、封入体のサイズや数量の増加によってニューロン死のリスクが高まるという関係は否定され、封入体の形成によってニューロン死のリスクが高まるという関係も否定された。むしろpolyQ伸長は、HTT濃度に影響を及ぼすこととは無関係に、凝集していない、つまり拡散性のあるHTTに毒性を生じさせ、これがニューロン死のリスク増加の引き金になっていることが示唆されている。この毒性の高い拡散性HTTの濃度が高い場合は、封入体の形成時期が早かった。

Finkbeinerたちは、封入体の形成と神経変性との関係をさらに詳しく調べ、毒性のある拡散性HTTの濃度が高いとニューロン内で封入体が発生しやすくなることを報告している。また、拡散性HTTの初期濃度が類似しているニューロン群の比較解析では、封入体が形成されると拡散性HTTの濃度が減少するという関係が見られ、その結果としてニューロンの生存時間が長くなった。

今回の研究結果は、封入体が、毒性を有する拡散性変異型HTTの濃度を減少させることでニューロンを守っているとする学説を支持している。そうすることで拡散性HTTが、ニューロン内の重要な標的分子に作用しないようになっている、とFinkbeinerたちは推論している。研究成果と同様に研究方法も注目に値する。この方法は、他の疾患の原因や進行と関係する細胞内変化の性質を解明するためにも活用できる貴重な新ツールと言える。

doi:10.1038/fake529

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