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X染色体の配列解読がもたらす大いなる成果

Nature Reviews Genetics

2005年4月1日

ヒトX染色体のDNA配列が発表された。これは、遺伝子構成の解読された14番目のヒト染色体である。このDNA配列からは、X染色体の数多くの独特な特徴が明らかになっており、X染色体の不活性化や哺乳動物の性染色体の起源や進化に関する有用な知見がもたらされる可能性がある。

今回、ショットガン法やBACライブラリー、PACライブラリーを使って行われた配列解読作業の結果、約155MbのX染色体に含まれる遺伝子の数が意外に少ないことがわかった。X染色体の注釈付けされた遺伝子の数は1,098で、これまでに注釈付けされたヒト染色体の中でも遺伝子密度が最も低いグループに属している。このような遺伝子密度の低さと符合するように、X染色体におけるCpG島という推定遺伝子の密度は、ヒトゲノム全体における推定平均密度のちょうど半分になっている。X染色体は、散在性反復配列の数が非常に多く、特にLINE1グループが数多く含まれている。反復配列それX染色体でのLINE1グループの分布状態は、これらの反復配列がX染色体の不活性化において役割を果たしているとする仮説とも整合性がある。

哺乳動物のX染色体の起源は、とても興味深いテーマであり、それにはいくつかの理由がある。独特の遺伝子量補償メカニズムやヒトY染色体との関係などが、その一例だ。今回、M. T. Rossたちは、X染色体が、有胎盤哺乳類の遺伝子ゲノムの中で最もよく保存された遺伝子編成となっていることを確認した。彼らは、ヒトX染色体とニワトリゲノムの配列アラインメントを行い、ヒトの性染色体が常染色体を起源としており、その後、単一の染色体システム内に集合して性決定が行われることを裏づけた。また、Rossたちは、さらなる解析を行い、過去3億年の間にX染色体に生じた一連の再編成の時期と部位や、X染色体とY染色体の間での組換えが次第に減って、それぞれの染色体が独自に進化するようになったことについての貴重な情報を提供している。

X染色体は、遺伝医学の歴史上で独自の地位を占めている。X染色体連鎖性疾患は、その遺伝形式のために比較的容易に認識でき、X染色体連鎖性劣性遺伝子変異の表現型に対する影響は、雄に生じる。したがってX染色体に含まれる遺伝子の数は少ないが、メンデル形式で遺伝する疾患の約10%は、X染色体が原因だと考えられている。

X染色体の注釈付けが行われれば、稀な遺伝病に関与する遺伝子を新たに発見するための研究プロセスが加速するだろう。さらに、X染色体の遺伝子配列の研究が進めば、X染色体の不活性化、ゲノムインプリンティングや性染色体の進化に潜む謎の解明に役立つかもしれない。今後明らかになる各種ゲノム配列を活用して比較研究を行うことで、哺乳動物と哺乳類以外の動物の性染色体を形作るさまざまな進化的な力を解明できるようになるかもしれないのだ。

doi:10.1038/fake492

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