グリーンエネルギーを選ぶように消費者を誘導する
Nature Climate Change
2015年6月16日
追加料金を支払ってグリーンエネルギーを利用することを初期設定した申込書にしておくと、価格が高めの家庭用エネルギーを消費者が購入する可能性が高くなるようだ。このことを示唆する論文が、今週のオンライン版に掲載される。
研究施設での実験で明らかになった行動原理をスケールアップして現実社会に適用すること(ナッジnudgeという手法)は、強制力を用いずに人々の意思決定に影響を及ぼして社会目標を達成する方法として、政策立案者が頻繁に用いている。初期設定のナッジは、当事者が積極的にオプトアウト(利用しないこと)の意思表示をしないと、そのまま適用される。この初期設定は臓器提供などのプログラムへの参加を増進させることが実証されているが、これと類似した手法が、消費者のエネルギーに関する行動に効果的に影響を及ぼすかどうかについては分かっていない。
今回、Sebastian LotzとFelix Ebelingは、ドイツの41,952世帯を対象とした無作為化比較試験を実施し、将来の購入に関心を持って全国展開のエネルギー供給企業のウェブサイトにアクセスした者に2つの価格の異なるエネルギー供給契約のどちらかを選択させた。いずれの契約でも追加料金が発生するグリーンプランをオプションとして選べるようにしておき、あらかじめグリーンプランにチェック印をいれた契約(オプトアウト版)とチェック印をいれていない契約(オプトイン版)のいずれかを被験者に対し無作為に提示した。
その結果、オプトイン版でグリーンプランを購入したのは全世帯のわずか0.62%だったのに対し、オプトアウト版でグリーンプランを購入したのは5.58%となった。また、今回のような初期設定のナッジがある場合には、ドイツの環境政党への支持とグリーンエネルギーの選択との関連性が認められないことも判明した。以上の結果に基づいて、LotzとEbelingは、補助金やその他の経済的なインセンティブを用いずに、持続可能なエネルギー源から得られるエネルギーを消費者が選ぶように後押しできると考えている。
doi:10.1038/nclimate2681
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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