Research Press Release

神経科学:麻痺後の手の動きと触覚の回復

Nature Medicine

2026年7月17日

脊髄損傷により麻痺した男性が、再び手を動かし、触覚を一部取り戻すことを支援した神経義肢システムについて報告する論文が、Nature Medicine にオープンアクセスで掲載される。このシステムによる効果の一部は、装置の電源を切った後も持続することが判明しており、これは、リアルタイムでの動作支援に加え、より長期的な回復を支える可能性があることを示唆している。

脊髄損傷は、麻痺のおもな原因であり、その半数以上は四肢麻痺をともない、腕や脚の動きに影響が出る。損傷部位より下で随意運動や感覚が認められない完全脊髄損傷は、特に治療が困難である。従来のブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI:brain–computer interface)は、ある程度の運動機能の回復には寄与してきたものの、触覚の回復やより長期的な回復の支援にはまだいたっていなかった。

Chad Boutonら(ノースウェル・ヘルス〔米国〕)は、「二重神経バイパス(double neural bypass)」システムを開発した。このシステムは、本人の運動意図に関連する脳信号を読み取る。その後、これらの信号を用いて、脊髄および触覚に関与する脳の部位である一次体性感覚野(primary somatosensory cortex)に的を絞った刺激を与えることで、自身の手の制御を支援する。臨床試験では、脊髄損傷により完全四肢麻痺となった42歳の男性を対象に、このシステムの検証が行われた。脊髄への刺激のみでも、肘を曲げる能力が向上し、両手を顔に持っていくことが可能になった。システム全体は、手の開閉、コップから飲むこと、自力で食事をすること、および繊細な物体を扱う際の握力制御を支援した。このシステムは、繰り返し再訓練を行うことなく、5か月以上にわたり参加者の意図した手の動きを認識し続けた。また、参加者は手首に一部の触覚感度が回復し、その感覚は刺激を停止した後も2か月以上持続した。

著者らは、この手法が重度の麻痺後の実用的な手の動きと触覚の回復を支援できる可能性があると示唆している。ただし、損傷の種類が異なる、より多くの人を対象としたさらなる検証が必要とされる。また、このシステムは依然として高度に専門化されており、現時点では、操作に訓練を受けたスタッフを要する。

Chandrasekaran, S., Wandelt, S.K., Jangam, A. et al. A neuroprosthesis for restoring hand movement and sensation in a person with complete tetraplegia. Nat Med 32, 2591–2601 (2026). https://doi.org/10.1038/s41591-026-04498-0
 

doi:10.1038/s41591-026-04498-0

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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