【遺伝学的解析】:スタチンへの応答に影響する遺伝的変異
Nature Communications
2014年10月29日
スタチンによって治療中の4万人を超える患者を対象にした大規模解析から、2種類の遺伝的バリアントが新たに明らかになった。これらのバリアントは、スタチンに対する低比重リポタンパク質(LDL)コレステロールの応答に影響を及ぼす可能性があるという報告が今週掲載される。この研究成果は、薬剤応答に関する遺伝的基盤についてのさらなる手掛かりを与えるものとなる。
スタチンは最大55%まで血中LDLコレステロール濃度を低下させることが明らかになっており、このため、心血管疾患の管理と予防に極めて有効である。 ところがこの奏効性にもかかわらず、 薬剤への応答は患者ごとに大きく異なり、この多様性は遺伝的素因に基づくことが判明している。
Mark Caulfieldらは、6種類の無作為化臨床試験と10種類の観察研究からのデータを分析し、患者のスタチンに対する応答に影響を与える遺伝的バリアントを探した。加えて新たな患者22,318人に対して確認解析を行い、スタチン治療によるLDLコレステロール値低下の度合いに著しい影響が見られる、2種類の新たな遺伝的バリアントを特定した。
1つのバリアントは、 ソーティリン(sortilin)遺伝子(すでにリポタンパク質との関連が判明している遺伝子)の近傍に位置しており、スタチン応答を高進した。対してもう1つのバリアントは、肝臓によるスタチンの取り込みに関与していると考えられ、薬剤の効果を低めた。今回の結果は全体として、スタチン治療に対するLDLコレステロールの応答を担う生体機序についての理解を深めると期待される。
doi:10.1038/ncomms6068
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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