Research Press Release
レット症候群の症状をもたらす抑制性ニューロン
Nature Neuroscience
2014年4月29日
マウス前脳の阻害性ニューロンにあるMeCP2タンパク質に特定の機能喪失が起こると、レット症候群で報告されている感覚消失や発作の引き金になるとの報告が、今週掲載される。この研究は、レット症候群に伴う衰弱症状の多くに関わると思われる細胞の同定という面で重要な洞察をもたらすものであり、これらニューロン中のMeCP2置換を狙いとする戦略が実現可能な治療手段となるかもしれないと示唆している。
レット症候群は神経発生に関わる疾患であり、MeCP2遺伝子に生じた突然変異に起因するとされている。レット症候群の症状には頭部と脳容量の矮小化、呼吸異常、知的障害、発作や感覚(聴覚や視覚)消失などがある。
Zhaolan Zhouたちの報告によると、マウスで前脳のGABA作動性阻害性ニューロンという特定のニューロンで特異的にMeCP2を削除するだけで、この疾患に伴う聴覚障害と発作が繰り返し現れる。ところが、グルタミン酸作動性興奮性ニューロンという他の種類のニューロンからこの遺伝子を削除しても、この結果は現れない。加えて、阻害性ニューロンで「正常な」MeCP2発現に置換するだけで、そのマウスの聴覚経路が回復し発作が改善する。なぜMeCP2発現がGABA作動性阻害性ニューロンで特異的に必要なのか、また、これらニューロンが感覚消失や発作の発生に厳密にはどのように寄与するのかは全く明らかではない。
doi:10.1038/nn.3710
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
環境科学:火山活動が中世ヨーロッパにペストをもたらしたかもしれないCommunications Earth & Environment
-
人工知能:チャットボットは投票意向に影響を与えるかもしれないNature
-
社会科学:不安定なビデオ通話は、会話だけでなくそれ以上のものを損なうNature
-
天文学:衛星による光害が宇宙天文学研究を脅かしているNature
-
素粒子物理学:風変わりなクォーク四重項の定量化Nature
-
動物の行動:病気のアリはコロニーを守るため自ら犠牲となるよう合図するNature Communications
