Research Press Release
分解されて排泄されるナノ粒子構造体
Nature Nanotechnology
2014年1月27日
DNA鎖とナノ粒子構成ブロックを用いて形成されたナノ構造体は、マウス腫瘍に取り込まれやすいが、その後構成成分に分解されるため体内からのクリアランスが良好であり、潜在的毒性が低い。今週報告されたこの結果は、安全で制御された抗がん剤送達に向けて新しい戦略をもたらすものである。
ナノ粒子をうまく送達するためには、粒子サイズは腫瘍に取り込まれて滞留できるほど大きくなければならない。しかし、ナノ粒子が治療効果を発揮した後も長期間体内に大きいまま存在すると、体内のクリアランス系によって除去されず、慢性毒性を引き起こす可能性がある。
Warren Chanたちは、DNA鎖を用いて核となるコアナノ粒子の周りに小さなナノ粒子をつなげることによって、腫瘍に滞留可能な大きさのナノ粒子構造体を作製した。そして、作製したナノ構造体が造影剤や抗がん剤のキャリアとして働くことを実証した。また、コアナノ粒子やバラバラのナノ粒子の混合物と比較して、ナノ構造体がマウス腫瘍に蓄積されやすいことを見いだした。重要なのは、その後のマウスの尿検査において、ナノ粒子構成ブロックが検出されたことである。この結果は、ナノ構造体が分解され、腎臓を通して排泄されるほど小さくなったことを示している。今回の手法は、ナノ粒子の医学応用への懸念に対処する臨床的に意義ある解決策をもたらすものである、とChanたちは示唆している。
doi:10.1038/nnano.2013.309
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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