女性の存在で落ち着く
Nature Neuroscience
2013年11月18日
つがいの相手となる雌が存在するときにとりわけ目立つ、雄のハエが別の雄に示す攻撃的な行動は、その雄がそれ以前に雌ハエに接触していると抑制される場合がある。今週オンライン版に報告されるこの結果は、性的な競争相手に対する攻撃的な態度の抑制には、雌のフェロモンが介在しており、それを検知する特別の神経回路が雄のみに存在することも示している。
キイロショウジョウバエでは、事前の社会的経験がさまざまな行動面の相互作用に影響をおよぼすことが知られている。同種の他個体に対する攻撃的な行動はさまざまな進化をとげた生物種にみられるもので、雄のハエは攻撃的な姿勢やしぐさをいろいろ示すことが知られており、相手に対する突進などがそれに含まれる。
Yuh Nung Janらは、攻撃側の雄が事前に雌ハエと数日間いっしょに過ごすと、ほかの雄に対する攻撃的な行動をあまり示さなくなることを発見した。攻撃のこのような阻害は、いろいろなショウジョウバエのうちでも同じ種の雌に連続して接触したあとでのみ起こり、しかも雄ハエと雌ハエの身体的な接触を必要としている。接触が視覚や嗅覚に関わる雌の刺激だったり、あるいは交尾であってもそれが短期間の一過性のものだったりだと、いずれも攻撃的行動を鈍らせるのに不十分であった。Janらはまた、このような攻撃的態度の阻害に介在する特異的な神経回路についても調べ、雌ハエから出るフェロモンが雄ハエの脚の剛毛にある化学受容器によって検知されることを見つけた。化学物質によるこの情報はついで、雄ハエの脳にのみ存在する神経回路に伝達される。
雄対雄の攻撃は配偶者争いに影響し、繁殖における有利さを偏向させる可能性がある。またこの行動は動物のさまざまな種にわたって高度に保存されている。今回の研究は、こうした行動が事前の社会的経験によって変更されうるしくみについての洞察をもたらすものである。
doi:10.1038/nn.3581
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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