【生態】小氷期に増加したペンギンの個体数
Scientific Reports
2013年8月22日
南極の高緯度地域にあるロス島のアデリーペンギンのコロニーに関して、バイオマーカーを用いて個体群の歴史を推測する研究が行われ、ペンギンの個体数が小氷期(紀元前1800~1500年頃)に増加したことが示唆されている。この新知見は、これより北側の南極区の複数の地域での結果と異なっており、南極の低緯度地域と高緯度地域で気候変動に対する応答が異なる可能性が示されている。
ペンギンの個体群動態は、海面水温、気温、積雪、食物量といった気候要因と環境要因の変動に影響される。従来の研究では、南極海域でのペンギンの個体数が、気候の温暖化によって増加し、寒冷化によって減少することが明らかになっていた。寒冷期には、海氷の増加によって、海岸からコロニーへの出入りができなくなることがあり、食料不足が問題になることもある。
今回、Zhou-Qing Xieたちは、ロス島のケープ・バードで採取された堆積物に含まれていたバイオマーカーを使って、アデリーペンギンのコロニーにおける過去700年間の個体数の推移を推測した。その結果、小氷期の初め、つまり、夏季の気温が、それまでの200年間より摂氏約2度低くなった時期に、この地域がアザラシの生息地からペンギンの生息地に変わり、ペンギンがこの地域の優占種になったことが明らかになった。また、ペンギンの個体数のピークは、紀元前1670~1490年頃であったことも判明した。Xieたちは、海氷の拡大によってペンギンの重要な食料源であるオキアミが豊富に得られる点を指摘し、気候変動に応じた南極のペンギンの個体数の変化は、緯度によって異なっている可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/srep02472
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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