気候変動によるスペインオオヤマネコの絶滅を回避するには
Nature Climate Change
2013年7月22日
野生のスペインオオヤマネコ(Lynx pardinus)の個体数が、予想される気候変動によって急速に減少し、スペインオオヤマネコが今後50年間で絶滅することを明らかにした論文が、今週オンライン版に掲載される。今回の研究は、現在の保全対策には絶滅を遅らせる効果しかないことを示唆し、保全対策に気候変動の影響を考慮に入れることで絶滅を回避できる可能性があることも示している。
南欧の一部の地域を原産とするスペインオオヤマネコの個体群が、大きく減ってきている。原因は、主たる食料源であるウサギの個体数の減少で、その一因が人間による乱獲である。スペインオオヤマネコの生存は、気候変動によって、さらに脅かされるおそれもある。ところが、スペインオオヤマネコの回復計画では、気候変動の予報による影響が無視されている。
今回、Miguel Araujoたちは、スペインオオヤマネコの存続に対する気候変動、餌動物の入手可能性と管理的介入の複合的な影響を調べた。そして、気候変動が、スペインオオヤマネコの個体数に対して、急速かつ重大な負の影響を及ぼし、その影響の大きさは、スペインオオヤマネコが個体群を維持できるほど十分に高い餌動物密度のある気候的に有利な地域へ適応又は分散する能力を超えることを明らかにした。Araujoたちは、温室効果ガス排出量削減が地球規模で推進されたとしても、同じ予測結果になるとしており、気候変動の影響、餌動物の個体数と生息地の連結性に配慮して入念に計画された再導入プログラムを実施することで、今世紀中のスペインオオヤマネコの絶滅を回避できると考えている。
今回の研究は、将来的な生物多様性の減少を防止するための政策を設計する際に、餌動物の入手可能性、気候変動と両者間の相互作用を考慮することが重要な理由を明らかにしている。
doi:10.1038/nclimate1954
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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