Research Press Release
【医学研究】マウスの中枢神経系繊維の再生能
Nature Communications
2013年6月26日
損傷したマウスの脳内では、損傷した中枢神経系の繊維が、損傷を受けていない領域で再び発生することができ、その速度が末梢神経系における神経の再生速度に匹敵することが明らかになった。この新知見は、中枢神経系には損傷後の再生能がないという一般的な考え方に反している。
中枢神経系が損傷すると、多くの微視的な構造変化が生じ、麻痺、発語不明瞭、筋力低下といったさまざまな影響が生じることがある。この分野での研究のかなりの部分は、中枢神経系の脊髄と白質についてのものであり、ニューロンが豊富に含まれる灰白質で起こる変化については、十分な解明がなされていない。今回、Vincenzo De Paolaたちは、微速度顕微鏡撮影の技術を用いて、生きたマウスの損傷した脳における神経回路の応答を1年にわたって追跡観察した。その結果、特定のタイプの神経繊維が、損傷していない脳内で通常見られる以上の長さにわたって自発的に再成長できることが判明した。その原因の1つは、成長阻害因子を分泌するグリア性瘢痕が周辺に存在していないことだった。
De Paolaたちは、哺乳類の脳内での軸索の再生機構を十分解明できていないことを認めつつ、こうした顕微鏡撮影技術が、これまで実現不可能だった方法による修復戦略を検証するうえで役立つことを期待している。
doi:10.1038/ncomms3038
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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