Research Press Release
【社会進化】身内びいきが必勝法の一つである理由
Scientific Reports
2012年6月22日
内集団ひいき(身内びいき)の進化に関する数理モデルを示した論文が、今週、Scientific Reportsに掲載される。今回の研究では、今日の味方が明日の敵になる可能性があっても、友人に好意的に接することが有利に働く場合があるとする見解が示唆されている。
内集団ひいきは、人間行動の中心的な特徴の一つであり、人々は、他の集団の成員よりも自分が帰属している集団の成員を助けることが多い。しかし、人間の場合、集団成員性は動的で柔軟性が高い。例えば、2008年の米国大統領選挙では、民主党の大統領予備選の段階で、バラク・オバマ候補とヒラリー・クリントン候補の支持グループがそれぞれ結成され、各グループは相手方に対して強い偏見態度を示した。ところが、予備選が終わり、大統領選挙に移行すると、この2つのグループは一つにまとまり、民主党内のバイアスは消滅した。
今回、M Nowakたちは、進化的集合論の枠組みを用いて、選択的な内集団協力が進化する条件を調べた。Nowakたちのモデルでは、人々は、異なる集団間を移動でき、交流相手が自分の所属集団の成員かどうかで異なった戦略をとることができる。人間社会では、集団同一性に基づく差別が、良きにつけ、悪しきにつけ、強い力となりうるので、集団同一性と差別の進化動態を解明することは、重要な研究目標となっている。
doi:10.1038/srep00460
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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