【情報理論】なぜ一部のミームだけが急速に広まるのか
Scientific Reports
2012年3月30日
インターネットミームは、すぐに跡形もなく消えていくものがほとんどだが、一部のミームは急速に伝播する。このほど、その理由の説明を試みる研究が行われ、ソーシャルネットワーク構造における個人の有限な注目をめぐる競争のモデルを用いて、ツイッターのようなソーシャルネットワーキングサイトでの話題の人気度と持続性やユーザー活動の広範な多様性を説明できるという結論が示された。この研究結果を報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。
ソーシャルメディアの到来で、考え(ミーム)の届く範囲が広がったが、多くの人々の場合、オンラインのソーシャルネットワークを介して触れる情報量が消費能力を超えてしまっている。今回、L Weng、F Menczerたちは、ソーシャルネットワークを介した情報拡散における競争機構とその役割に関するモデルを作成し、1億2千万件以上の「リツイート」(他のユーザーのメッセージの再投稿)を含むツイッターのデータを用いて、このモデルを検証した。これらのデータでは、130万の「ハッシュタグ」(話題ラベル)が使われていた。
この情報拡散モデルでは、ソーシャルネットワーク構造、それに、我々の注目の有限性が重要な構成要素となっており、いずれの要素が欠けても実験データと整合しない結果となる。ミームの内在的な魅力といった要素は、ミームの人気度を測るうえでは役立つ反面、統計レベルでは、ミームの内在的「価値」を援用せずに、世界規模で観察されたミームの動態を再現できることをWeng、Menczerたちは明らかにした。
doi:10.1038/srep00335
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
古生物学:インドで発見された化石は新属新種の古代の大蛇だったScientific Reports
-
生体力学:昆虫の翅のヒンジは筋肉によって制御されているNature
-
気候変動:気候変動に伴う経済的コストNature
-
生物学:闘争・逃走系の起源Nature
-
材料:接着剤が海洋性軟体動物種の追跡に役立つNature Communications
-
気候変動:海洋での致死的な極端低温事象の強度と頻度が高まっているNature Climate Change