考古学:すべての道がローマにつうじるわけではない――ローマ帝国の道路網を探る
Nature Communications
2026年9月16日
ローマ帝国の道路網全体に関する詳細な構造分析を報告する論文が、オープンアクセスジャーナルNature Communications に掲載される。この分析は、約30万キロメートルにおよぶ道路の地形情報を扱っている。研究結果から、ローマ時代の道路は従来考えられていたほど一様に直線的ではなかったことが示唆された。また、現代の町や交通網に対するローマ時代の道路の長期的な影響も示されている。
西暦117年の最盛期、ローマ帝国はヨーロッパ、中東、北アフリカにまたがり、その領域は約550万平方キロメートルにおよんだ。帝国内は、道路、河川、海上交通のネットワークによって結ばれていた。これまで、ローマはこのネットワークの中心に位置すると広く考えられてきた。また、ローマ人は直線的な舗装道路を建設する傾向にあり、現代の道路はローマ時代の道路と同様のルートにそっているとも考えられてきた。
Tom Brughmansら(オーフス大学〔デンマーク〕)は、著者らが以前に報告した「Itiner-e」を用いて、ローマ時代の道路の構造的特徴を調べた。これは、全長約30万キロメートルのローマ時代の道路を示したデジタルモデルである。著者らは、各地域の地形に関する4つのおもな特性を分析した。具体的には、平均勾配と最大勾配、標高、方位、道路の「直線性」であり、これらを現代の舗装道路のデータセットと比較した。ローマ時代の道路は、地形が許す場所ではおおむね直線的で、特に西ヨーロッパや北アフリカのような低地でその傾向が見られた。しかし、技術的および地形的な制約により、現代の道路ほど直線的ではない傾向があった。
ローマ時代の道路によって、現代の道路インフラを完全に説明できる地域はなかった。州都などの重要な都市は、ほかの都市に比べて道路網の中心部に位置していた。これらの都市は、地域の主要な結節点でもあった。著者らは、現在のトルコに位置するアンティオキア(Antioch)、アンカラ(Ankara)、ビザンティウム(Byzantium)などの一部の都市が、ローマ自体よりも道路網の中心に適した位置にあったと指摘している。現代にいたるまでの道路密度の増加は、バーミンガム(英国)、マドリード(スペイン)、パリ(フランス)などの周辺で最も顕著だった。こうした地域は、かつて小規模な人口中心地だったものの、その後、大都市圏へと成長した地域である。著者らは、また、ローマ帝国の交通路は各属州内で計画されていたと考えられると述べている。
著者らは、道路データが網羅的ではないと指摘している。また、交通インフラの全体像をより詳しく把握するには、今後の研究で河川交通や海上交通も考慮する必要があるとしている。しかし、これらの観察結果は、人、物資、思想、疾患がローマ帝国全土にどのように広がったかを検証するうえで重要な手がかりとなる。さらに、現代のインフラに対するローマ時代の道路網の長期的な影響を示すものでもある。
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- Published: 15 September 2026
Pažout, A., Brughmans, T., de Soto, P. et al. Network science reveals the structure and lasting impact of the Roman road system. Nat Commun 17, 9551 (2026). https://doi.org/10.1038/s41467-026-75453-3
doi:10.1038/s41467-026-75453-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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