生物学:熱帯性の蝶の種は近縁種に比べて寿命が約3倍も長い
Nature Communications
2026年6月17日
ドクチョウ属(Heliconius)の蝶は、近縁種に比べて寿命が約3倍長くなり、一部の個体では1年近く生存することを報告する論文が、オープンアクセスジャーナルNature Communications に掲載される。したがって、これらの蝶は現在までに報告されている中で最も長寿な蝶の一種であり、長寿の仕組みを解明するための新たなモデルとなる可能性がある。
ドクチョウ属の蝶は、蝶類の中でも記録されている成虫の寿命が最も長い種の一つであり、野生下で少なくとも6か月間生存する個体が観察されている。これは、寿命がおよそ6週間であるドクチョウ族の近縁種よりも大幅に長い。その独特な長寿の要因は明らかになっていなかったものの、成虫期に花粉を摂食し続ける行動が関与している可能性が指摘されている。
Jessica Foleyら(ブリストル大学〔英国〕)は、蝶の飼育施設でのデータ、標識・放流・再捕獲調査、および管理された飼育実験のデータを統合し、ドクチョウ族全体における寿命と老化を比較した。その結果、ドクチョウ族全体で最大寿命には25倍のばらつきが認められ、Dione juno(ウラギンドクチョウ)の14日からHeliconius hewitsoni(ヒューイットソンナイドクチョウ;記録上最も長寿な蝶の一つ)の348日まで及び、平均寿命は約177日であった。全体として、ドクチョウ属は、花粉を摂食しない近縁種と比較して、中央値および最大寿命がいずれも長く、基礎死亡率が低く、老化の進行速度が遅いことが明らかになった。著者らは、次に、代表的な花粉摂食種(Heliconius hecale;ヘカレドクチョウ)と非花粉摂食種(Dryas iulia;チャイロドクチョウ)を用いて、食性が寿命に及ぼす影響を調査した。その結果、ヘカレドクチョウの個体は、チャイロドクチョウに見られる加齢にともなう生理的衰えが見られず、体重や筋機能をより長期間にわたって維持することが示された。しかし、ヘカレドクチョウは、食事として花粉を摂取できない状況下でも、チャイロドクチョウに対して全体的な寿命の優位性を維持することが示され、その寿命の延長には栄養的要因と進化的要因の両方が関与していることが示唆された。
この発見は、成虫による花粉摂食という生態学的な変化が、どのように寿命の延長に寄与するのかを解明するうえで、ドクチョウ属の蝶が有用なモデルとなる可能性を示している。一方で、寿命の延長や老化の遅延を実現する具体的な仕組みについては、今後さらなる研究が必要である。
- Article
- Open access
- Published: 16 June 2026
Foley, J., McPherson, J., Roger, M. et al. Evolution of increased longevity and slowed ageing in a genus of tropical butterfly. Nat Commun 17, 5077 (2026). https://doi.org/10.1038/s41467-026-73635-7
doi:10.1038/s41467-026-73635-7
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