Research Press Release

気候:玄武岩はより環境に優しいセメントの鍵となるかもしれない

Communications Sustainability

2026年5月15日

石灰石の代わりに、玄武岩(basalt)などのカルシウムを豊富に含む珪酸塩岩から、最も広く使用されている種類のセメントを製造することで、セメント製造業界からの二酸化炭素排出量を80%以上削減できる可能性があることを報告する論文が、オープンアクセスジャーナルCommunications Sustainability に掲載される。この原料の切り替えは、既存の技術で実現可能であり、これらの岩石からポルトランドセメント(Portland cement)を製造する場合、理論上、石灰石を使用する際に現在必要とされるエネルギーの60%未満で済むかもしれない。

ポルトランドセメントは、現代の建築のほぼすべてで使用されている。現在の製造方法では、主要成分である生石灰(酸化カルシウム)を生成するために、石灰岩を1500℃以上に加熱する必要がある。しかし、この過程では化学反応による副産物として大量の二酸化炭素が発生し、エネルギー関連の排出量を除いても、セメント1トンあたり約500キログラムに上る。全体として、セメント生産業界は世界の排出量の約4.4%を占めており、この分野での削減はネットゼロ目標達成における重要な目標となっている。

Jeff Prancevic(カリフォルニア大学サンタバーバラ校〔米国〕)、Cody Finke(Brimstone Energy, Inc.〔米国〕)らは、玄武岩や斑れい岩(gabbro)などのカルシウムを豊富に含む珪酸塩岩が、ポルトランドセメントの生産において石灰岩の実用的な代替材となり得るかどうかを調査した。著者らは、まず、既存の地質図を用いて、採掘可能な地表のこれらの岩石の種類と埋蔵量を評価し、現在の生産レベルであれば、数万年にわたるセメント生産を賄うのに十分な量が存在することを確認した。次に、著者らは、珪酸塩岩を用いたセメント生産におけるエネルギー需要と二酸化炭素排出量を推定した。その結果、理論上の最小エネルギー需要は、石灰石を使用する場合よりも40%以上低いことがわかった。天然ガスを動力源とした場合、セメント1トン当たりの二酸化炭素排出量は、石灰石使用時の609キログラムから、使用する珪酸塩岩の種類に応じて43~59キログラムに減少した。

最後に、著者らは既存の技術を用いて珪酸塩岩からポルトランドセメントを製造する方法を調査した。著者らは、実行可能なプロセスを特定し、現在の化石燃料中心のエネルギーミックスを使用した場合でも、石灰石を用いた現行の標準的なプロセスと比較して二酸化炭素排出量を25%以上削減できることを明らかにした。

Prancevic、Finkeらは、珪酸塩岩には通常、経済的に価値のあるさまざまな金属が含まれており、これらは工業的なセメント生産の過程で副産物として回収可能であると指摘している。また、既存の環境配慮型セメントの代替案と比較して、著者らの提案する解決策は、建設業界が新素材を採用する前に必要な大規模な開発、検証、および実証の期間を省略できる可能性があると述べている。これは、著者らの研究における最終製品は標準的なポルトランドセメントであるためである。さらに、著者らは、今後の研究では、プロセスの効率向上と、価値ある副産物の精製に焦点を当てるべきであると付け加えている。

シュプリンガーネイチャーは、国連の持続可能な開発目標(SDGs;Sustainable Development Goals)、および当社のジャーナルや書籍で出版された関連情報やエビデンスの認知度を高めることに尽力しています。本プレスリリースで紹介する研究は、SDG 9(産業と技術革新の基盤を作ろう)SDG 12(つくる責任、つかう責任)およびSDG 13(気候変動に具体的な対策を)に関連しています。詳細は、「SDGs and Springer Nature press releases)」をご覧ください。

Prancevic, J.P., Finke, C.E., Peterson, E. et al. Silicate-derived calcium as a pathway to low-carbon Portland cement. Commun. Sustain. 1, 78 (2026). https://doi.org/10.1038/s44458-026-00056-4
 

doi:10.1038/s44458-026-00056-4

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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