遺伝学:マウスにおける再クローニングの限界
Nature Communications
2026年3月25日
マウスを用いた20年間の研究によると、哺乳類において再クローニングは、無期限に続けることはできないことを報告する論文が、オープンアクセスジャーナルNature Communications に掲載される。この結果は、哺乳類のクローンに蓄積しうる大規模な遺伝子変異を除去するには、有性生殖が必要であることを示唆している。
個体レベルのクローニングは、研究にとって貴重な手段となってきたが、成功率が低いため、その有用性は限定的であった。一部の動物や植物は、遺伝的欠陥を蓄積することなく無性生殖が可能だが、哺乳類のクローニングでも同様のことが達成できるかどうかは明らかではなかった。若山 照彦ら(山梨大学)は、以前、マウスをクローニングし、そのクローンをさらにクローニングする再クローニングが、子孫の健康に影響を与えることなく、最大25世代まで行えることを示していた。これまで、この能力に限界があるかどうかは定かではなかった。
若山らは、実験を継続し、20年以上にわたるマウスの再クローニングが最終的に致死的なDNA変異の蓄積を招き、第27世代以降で出生率に影響を及ぼすことを示した。マウスは、寿命に影響を与えることなく、最大57世代までクローニングを継続できたが、最終世代は出生後に生存しなかった。初期の世代は、健康であり、ゲノム解析では大規模なDNA変異は検出されなかった。しかし、DNA変異は後期の世代で蓄積し、第40世代以降の出生率の急激な低下と相関していた。クローニングは、胎盤の構造も変化させるが、これは以前から観察されており、全世代のクローンで確認された。後期の世代のクローンマウスが自然交配を行った場合、その孫世代では正常な胎盤形成が見られ、生殖能力も向上した。これは、ゲノムの完全性を維持するために自然交配が重要であることを示唆している。
著者らは、25世代を超える再クローニングが、通常は自然交配を通じて修復されるはずのDNA変異の蓄積を招くと示唆している。これらの知見は、哺乳類のクローニングにおける技術的限界への理解を深めるのに役立ち、自然交配のDNA修復機能に関する知見を提供するものである。
- Article
- Open access
- Published: 24 March 2026
Wakayama, S., Ito, D., Inoue, R. et al. Limitations of serial cloning in mammals. Nat Commun 17, 2495 (2026). https://doi.org/10.1038/s41467-026-69765-7
News: Can a mouse be cloned indefinitely? Decades-long experiment has answers
https://www.nature.com/articles/d41586-026-00945-7
doi:10.1038/s41467-026-69765-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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