神経科学:麻痺患者向けタイピング装置の開発
Nature Neuroscience
2026年3月17日
キーボード入力を試みる際の脳活動を、タイピングされたテキストへと変換する装置を報告する論文が、Nature Neuroscience にオープンアクセスで掲載される。著者らは、この手法が眼球追跡システムなど、麻痺患者が一般的に使用するコミュニケーションシステムに比べ、より親しみやすく習得しやすい代替手段となり得ると示唆している。
これまでの研究では、脳コンピューターインターフェース(brain–computer interfaces)がコンピューターカーソルの移動や、発話や手書きの試みを解読することでコミュニケーションを支援できることが示されていた。しかし、標準的なQWERTYキーボードを使用するインターフェースの方が、多くの人にとってより好ましい場合がある。
Justin Judeら(マサチューセッツ総合病院〔米国〕)は、脳コンピューターインターフェースを開発し、四肢麻痺(四肢と胴体の麻痺)を持つ2名の参加者(筋萎縮性側索硬化症〔ALS:amyotrophic lateral sclerosis〕の参加者1名および頸髄損傷を持つ参加者1名)の大脳皮質(cerebral cortex)にデバイスを埋め込む臨床研究を実施した。著者らは、参加者がQWERTYキーボードで文字を入力しようとする際の指の動きを、自発運動に関与する脳領域である中心前回(precentral gyrus)に埋め込んだ電極で記録した脳活動を用いて、深層ニューラルネットワークを訓練した。このモデルを用いて、各参加者が入力しようとした文字を予測したところ、1人の参加者は1分間に最大110文字(22単語)を入力可能であり、これは健常者のスマートフォン入力速度の81%に相当し、単語誤り率は1.6%であった。もう1人の参加者は、1分間に最大47文字を入力できた。この装置は、わずか30文の練習で効果的に機能し始めた。
さらなる参加者による研究が必要であるものの、著者らはこの装置が麻痺患者の迅速かつ正確で容易なコミュニケーションの可能性を秘めていると示唆している。また、音声認識システムでは、必ずしも得られない、コミュニケーションのプライバシーも実現する。
- Technical Report
- Open access
- Published: 16 March 2026
Jude, J.J., Levi-Aharoni, H., Acosta, A.J. et al. Restoring rapid natural bimanual typing with a neuroprosthesis after paralysis. Nat Neurosci (2026). https://doi.org/10.1038/s41593-026-02218-y
doi:10.1038/s41593-026-02218-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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