動物学:雌のボノボは団結し、雄に対して優位性を発揮する
Communications Biology
2025年4月25日
雌のボノボ(Pan paniscus)は、自分の社会的地位を確保し、力の性差を減らすために、雄に対して連合を形成することを報告する論文が、Communications Biology に掲載される。この研究は、コンゴ民主共和国の6つのボノボコミュニティーで約30年にわたり観察されたもので、雄の攻撃性の影響は、雌が集団で連携することで軽減され、より高い割合で争いに勝利し、雄による交尾の支配を防いでいることが示唆された。
ブチハイエナ(spotted hyenas)のような少数の例外を除けば、集団内で雌が雄を支配することは社会性哺乳類では稀な現象である。哺乳類の雌が雄に対して優位に立つ方法については、いくつかの仮説が提唱されている。自己組織化仮説は、争いの勝敗による自己強化効果から優位性が生まれるとするもので、雌の繁殖制御仮説は、雄の攻撃性が交尾成功率の低下につながるとするものである。ボノボにおけるこの行動を説明するもう一つの可能性は、雌の連合仮説であり、雌のグループが協力して雄との争いに勝つ割合が高くなり、その結果順位が上がるというものである。
Martin Surbeckらは、1993年から2021年までの複数年にわたり、ボノボの6つのコミュニティーをモニターし、性的に成熟した個体間の攻撃事例を記録した。雌のパワーは、雄が雌の攻撃に屈した紛争の割合と、各雌によってランク付けされたコミュニティーの雄の割合によって測定された。データセット全体で1,786件の紛争があり、そのうち1,099件は雌が勝利した。雌はそれぞれのコミュニティーで雄のおよそ70%を上回っていた。
著者らは、雌が雄を支配するメカニズムとして提案されているもの(生殖制御や自己組織化など)は、ボノボにはあまり当てはまらないことを示唆している。雌のボノボが連合を形成する傾向は、雌のパワーの増加に関連する進化的メカニズムとして、連合仮説を実証した最初の例かもしれない。
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- Published: 24 April 2025
Surbeck, M., Cheng, L., Kreyer, M. et al. Drivers of female power in bonobos. Commun Biol 8, 550 (2025). https://doi.org/10.1038/s42003-025-07900-8
doi:10.1038/s42003-025-07900-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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