気候変動:極域の氷融解が世界の基準時刻に影響を及ぼす可能性
Nature
2024年3月28日
地球温暖化のために極域の氷の融解が加速することが、世界の基準時刻に影響を及ぼす可能性があることを明らかにした論文が、Natureに掲載される。グリーンランドと南極の氷の融解によって、地球の角速度(時間に対する角度位置の変化率)が以前より早いペースで低下している可能性があり、その結果、協定世界時(UTC)に負の「うるう秒」が必要となるタイミングが3年遅くなるかもしれないという。
ネットワークコンピューティングや金融市場などの数々の活動では、一貫性のある標準化された正確な時間の尺度が必要とされ、UTCがその役割を果たしている。しかし、固体地球の自転速度が一定でないため、UTCは、1969年に定義されて以来、他の星に対する地球の自転期間の一貫性を保つために調整することが必要になっている。固体地球の角速度は低下しているため、特定の時期にうるう秒を追加するという調整を必要としてきた。
今回、Duncan Agnewは数学的モデル化を行って、地球の角運動量の変動が世界の基準時刻に及ぼす影響を調べた。ほとんどが液体である地球の核の角速度は一定のペースで低下しており、そのために固体地球の角速度が(角運動量を保つために)着実に上昇している。この影響により、ここ数十年の間に必要だったうるう秒は数秒にとどまっており、これを将来に当てはめると、早ければ2026年に負のうるう秒が必要になると予測された。Agnewは、これに対して、グリーンランドと南極で氷冠の融解が最近増加したことが人工衛星による地球重力場観測によって明らかになっており、そのために固体地球の角速度が以前より早いペースで低下していることを明らかにした。Agnewは、こうした傾向を当てはめることで固体地球の角速度を予測し、現行の定義によるUTCは2029年まで負のうるう秒を必要としないと推定した。Agnewは、このことがコンピューターネットワークのタイミングに問題をもたらすことになり、UTCを地球の自転に合わせるという方針の変更を現在の計画よりも早く実施する必要があるかもしれないという見方を示している。
なお、Agnewは、最近になって極域の氷の融解が加速していなければ、負のうるう秒の導入を3年前倒しする必要が生じるだろうと述べており、地球温暖化と世界の基準時刻は密接に結び付いており、その関係が将来的にはさらに緊密になる可能性があると結論付けている。
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シュプリンガー・ネイチャーは、国連の持続可能な開発目標と、学術論文誌や書籍に掲載されている関連情報や証拠の認知度を高めることに尽力しています。このプレスリリースに記載されている研究は、SDG 13(気候変動に具体的な対策を、Climate Action)に関係しています。詳細については、こちらを参照してください。(https://press.springernature.com/sdgs/24645444 )
doi:10.1038/s41586-024-07170-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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