気候変動:ヨーロッパ産ビールの未来がほろ苦いものになるかもしれない
Nature Communications
2023年10月11日
ヨーロッパのビール生産地域では、2050年には伝統的なアロマホップの収量が4~18%減少し、苦味にとって極めて重要なホップの苦味酸が20~31%減少するという予測が得られた。このことを報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。著者らは、世界の市場網を安定させるための緊急の適応対策を求めている。
ビールは、水と茶に次いで世界で3番目に多く消費されている飲料であり、アルコール飲料としては世界で最も人気が高い。水、麦芽用オオムギ、酵母に加えて、ビールの風味付けにはホップが用いられる。ホップにはアルファ酸という化合物が含まれている。アルファ酸は、ビールの独特の苦い香りを生み出し、ビールの品質にも影響を与える。高品質なアロマホップの栽培は、気候条件と環境条件が適している比較的狭い地域に限られているため、生産量が気候変動の悪影響を受けるというリスクがある。予測されているより温暖で乾燥した気候がホップの収量とアルファ酸の含有率に及ぼす影響可能性は、現在のところほとんど分かっていない。
今回、Martin Moznyらは、ヨーロッパのビール用ホップの栽培地域の90%を占めるドイツ、チェコ共和国、スロベニアについて、1971~2018年のビール用ホップの収量とアルファ酸の含有率に関するデータを収集した。そして、1994年以前との比較で、ホップの成熟は20日早く始まるようになり、ホップの生産量は1ヘクタール当たり年間約0.2トン減少し、ホップのアルファ酸含有率は約0.6%下がったことを明らかにした。Moznyらは、過去のデータと気候モデルを組み合わせることで、2050年にはビールホップの収量が今よりも4~18%減少し、アルファ酸含有率が今よりも20~31%低下すると予測した。減少幅が最も大きくなると予測されたのが、ドイツ南部のテトナングやスロベニアのツェリェなど、南部のホップ栽培地域だった。気候モデルによれば、このように減少が予測される原因は、気温の上昇と干ばつの高頻度化や激化である。
Moznyらは、良質なビールを生産し続けるためには、伝統的なビール用ホップの栽培方法をヨーロッパの気候変動の悪影響を緩和するように適応させる必要があるという考えを示している。
doi:10.1038/s41467-023-41474-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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