神経科学:ヒトの脳の発達を評価する際に参照するチャート
Nature
2022年4月7日
ヒトの生涯における脳の発達に関する標準化参照チャートを示した論文が、Nature に掲載される。この参照チャートは、世界中の10万人を超える参加者の脳スキャンデータを分析して作成されたもので、将来的には、全ての年齢の対象者の脳の健康状態のデジタル評価と脳疾患の診断に応用できるかもしれない。
ヒトの子どもの形質(身長や体重など)を評価する際に用いられるのが成長曲線だが、ヒトの脳の成熟と健康的な加齢を定量化した参照標準は、これまで存在していなかった。今回、Richard Bethlehem、Jakob Seidlitzたちは、世界中の100件以上の研究から得られた10万1457人(受胎後115日から100歳まで)のMRIによる脳スキャンデータ12万3984点を照合し、ヒトの生涯における正常な脳の発達を示すチャートを作成した。このチャートは、対象者が標準的な成長軌道に乗っているかを判定する「パーセンタイルスコア」 の生成に使用でき、男女別に作成された。研究間で対象者も使用された技術や方法も異なっていたが、予測内容は安定していた。その結果、受胎後17週以前から3歳までの期間が発達上の重要な時期の1つであり、この期間中に脳の最大サイズの約70%が形成されることが判明した。この標準的枠組みは、疾患に関連する脳の解剖学的構造の変化パターンの検出に使用できることも明らかになった。その一例が、軽度認知障害の診断からアルツハイマー病の診断への移行を予測することだった。
Bethlehemたちは、これらの知見が臨床診療に適用されるまでに、十分な研究を行う必要がある点を強調している。今回の知見は、研究対象者のグループにおいて、ヨーロッパと北米の集団とヨーロッパ系の人々にデータが偏っている可能性があるという問題点があり、その点にも取り組む必要がある。それでも、Bethlehemたちは、これらのチャートをインタラクティブなオープンアクセス形式で提供することで、データベースが進化し続けることを期待している。
doi:10.1038/s41586-022-04554-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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