Research Press Release

進化:デニソワ洞窟に居住していたのは誰?

Nature

2021年6月24日

ロシアのデニソワ洞窟では、デニソワ人がネアンデルタール人よりも前から居住していた可能性のあることを報告する論文が、今週、Nature に掲載される。今回の研究で、最終氷期にユーラシアに住んでいたヒト集団の理解を深める重要な考古学的遺跡であるデニソワ洞窟での居住に関する年表が明らかになった。

デニソワ洞窟で発見された化石から抽出された古DNAについて、これまでに実施された解析からは、この洞窟にネアンデルタール人、デニソワ人、両者の混血の子孫が居住していたことが明らかになっていた。しかし、遺骸化石の数が少ないため、居住の時期と順序は不明のままだった。今回、Elena Zavalaたちの研究チームは、この問題を解決するために、30万~2万年前の700点以上の堆積物試料を収集し、堆積物中の有機物(例えば、ヒトや動物の遺骸の微細な断片)に由来すると考えられるDNAを抽出した。これらの試料のうちの175点からヒト族のミトコンドリアDNAが回収された。25万~17万年前のものとされた旧石器時代の石器との関連性を有する最古のヒト族DNAはデニソワ人のDNAで、最古のネアンデルタール人のDNAは旧石器時代の終わり頃のものだった。

685点の堆積物試料からは動物のミトコンドリアDNAが検出され、さらなる状況が明らかになった。ヒト族のミトコンドリアDNAには複数回のターンオーバーが見られ、それに加えて、動物(例えば、イヌ科、クマ科、ウマ科の動物)のミトコンドリアDNAの組成にも変化が認められた。Zavalaたちは、気候の変化に応じて、さまざまなヒト族と動物が現れて、洞窟内で居住し、去っていったという考えを示している。また、Zavalaたちは、約4万5000年前の堆積物試料から現生人類のミトコンドリアDNAを初めて検出したことから、デニソワ人とネアンデルタール人が、この洞窟に繰り返し居住し、それが4万5000年前頃まで続いたと考えている。デニソワ洞窟で現生人類の化石が発見されていないため、今回の研究では、ヒトの進化史を解明するのに役立つ堆積物分析の価値についても強調されている。

doi:10.1038/s41586-021-03675-0

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

「注目のハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度