環境:温帯湖の酸素濃度の低下
Nature
2021年6月3日
温帯湖の酸素濃度が長期的に低下する傾向が広範に見られることを報告する論文が、今週、Nature に掲載される。これは、80年にわたる傾向として、約400か所の湖について算出されたもので、気温の上昇と水の透明度の低下に関連していることが示唆されている。この低下傾向は、極めて重要な湖沼生態系を脅かす可能性がある。
水系における溶存酸素の濃度は、栄養塩類のバランス、生物多様性、飲料水の質、温室効果ガス排出量に影響を与えることがある。海洋における酸素の減少が報告されているが、湖沼における溶存酸素濃度の変化は、長期的かつ大規模な研究が不足していることもあり、それほど解明が進んでいない。
今回、Kevin Roseたちの研究チームは、この問題に取り組むため、1941~2017年に政府、大学、非営利団体が集めた393の温帯湖(主にヨーロッパと米国)の水温と溶存酸素の測定値をまとめた。こうした淡水環境における溶存酸素の減少は、海洋で観測されたものより約2~9倍大きかった。またRoseたちは、水温の上昇は表層水中の酸素濃度の低下と関連している一方で、深層水中の酸素濃度の低下は、温度成層(深度によって異なる温度層が形成されること)の強化と水の透明度の低下と関連していることを報告している。さらにRoseたちは、こうした傾向にいくつかの例外があることを指摘している。例えば、多くの湖(87か所)で、水温と溶存酸素濃度の両方が上昇していた。ただし、このような例外は藻類の大量発生に起因している可能性があり、藻類の大量発生は、湖面の溶存酸素濃度を上昇させるが、それより深い地点での酸素溶解度を低下させる。
Roseたちは、今後、人間の活動と気温の上昇によって、湖の溶存酸素の減少が続くことが予想され、こうした影響の対策として、湖系の厳格な管理を今後も続ける必要があると結論付けている。
doi:10.1038/s41586-021-03550-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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