Research Press Release

COVID-19:SARS-CoV-2に感染した小児の大半が典型的な症状を示さない

Scientific Reports

2021年5月14日

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染した小児の大半は、発熱、せき、息切れなどの典型的な症状を示さないと考えられることを報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。今回の研究では、米国各地の臨床検査で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と確認された小児(1万2306人)のデータが対象になった。

今回、Pakaj Aroraたちの研究チームは、研究対象となった小児の18.8%について、発熱、倦怠感、筋肉または関節痛、嗅覚障害または味覚障害などの症状があったと記録されていることを明らかにしている。具体的には、小児の16.5%に咳、息切れなどの呼吸器症状、13.9%に吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状、8.1%に皮膚症状(発疹)が見られ、4.8%に頭痛があった。

研究対象となった小児の5.5%(672人)が入院し、これらの入院患者の17.6%(118人)が救命処置を必要とし、4.1%(38人)が人工呼吸器を必要とした。入院リスクの男女差は、ほとんどなかったが、非ヒスパニック系黒人とヒスパニック系の入院リスクは、非ヒスパニック系白人よりも高かった。救命処置と人工呼吸器を必要とする確率については、民族集団間にほとんど差はなかった。

今回の研究によって得られた知見からは、小児と青年のCOVID-19患者は、成人患者よりも軽症の経過をたどると考えられることが示唆されるが、米国では、非ヒスパニック系黒人、ヒスパニック系、非ヒスパニック系白人の小児の間に重症度の差が見られるようである。典型的な症状が見られない症例の頻度が高いことを考えると、学校が再開する際には、学校に登校する小児とその直接接触者に対する警戒を強め、革新的なスクリーニング検査を実施し、頻繁に検査を行うことが必要と考えられる。こうした戦略を実施するにあたっては、人種的/民族的少数派の小児への対応を強化して、現存しているCOVID-19関連の健康格差を解消することが必要と考えられる。

doi:10.1038/s41598-021-89553-1

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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