インターロイキン22の遮断によってマウスのストレス誘発性貧血が改善する
Nature Immunology
2021年3月23日
免疫シグナル伝達分子のインターロイキン22(IL-22)は、赤血球の産生を阻害し、それによってマウスに貧血を引き起こす可能性があることを報告する論文が、Nature Immunology に掲載される。この知見は、ヒトのストレス誘発性貧血を治療する手掛かりとなるかもしれない。
環境中の放射線、殺虫剤、鉛や水銀などの重金属への曝露は、骨髄異形成症候群(MDS)の発症リスクを上昇させる。MDSは、骨髄中の血液細胞の成熟不全を特徴とするがんの一種で、通常は重度の貧血を併発する。しかし、こうした症状が引き起こされる詳しい機構は十分には解明されていない。
今回、Laurie Glimcherたちの研究チームは、Riok2遺伝子の発現が低下しているマウスにおいて、赤血球の産生減少につながるストレス誘発性のシグネチャーを明らかにした。Riok2遺伝子のヒト相同遺伝子は5番染色体のある領域にコードされており、MDS患者の10~15%でこの領域が欠失している。Glimcherたちは、Riok2の発現を抑制すると、免疫シグナル伝達分子であるIL-22の発現が亢進することを見いだした。マウスモデルでは、若い赤血球が特にIL-22への感受性が高いことが観察され、IL-22レベルが上昇すると赤血球の成熟が妨げられて、これが赤血球の細胞死につながることが分かった。続いてGlimcherたちは、抗体療法によってIL-22を中和すると、赤血球の産生が回復することを示した。
また、Glimcherたちは、IL-22レベルの上昇が、5番染色体に変異のあるMDS患者のコホートや、慢性腎臓病で貧血症状を有する別の患者コホートでも見られることを明らかにし、IL-22がこうした病状のバイオマーカーになる可能性があると示唆している。
Glimcherたちは、さらに研究が必要ではあるが、これらの知見を総合すると、IL-22シグナル伝達経路を標的にすれば、ヒトのストレス誘発性貧血の緩和に役立つかもしれないと結論付けている。
doi:10.1038/s41590-021-00895-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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