物理学:昼間の宇宙ゴミ追跡
Nature Communications
2020年8月5日
昼間の時間帯も、宇宙ゴミ(スペースデブリ)のレーザー測距を行えるようになったことを報告する論文が、今週、Nature Communications に掲載される。この成果により、衝突回避のためにレーザー測距法を使って宇宙ゴミを追跡できる時間帯が、数時間から1日の大半にまで大幅に延長された。
地球の周回軌道上には、機能停止した人工衛星やロケット機体などの宇宙ゴミが存在しており、その数の増加が稼働中の人工衛星の脅威となっている。宇宙ゴミのレーザー測距という技術は、宇宙ゴミとの距離を測ることができ、人工衛星や宇宙船の損傷を避ける上で役立つ。ところが、この方法は現在のところ、地上の人工衛星レーザー測距所が暗闇に包まれていて宇宙ゴミが太陽光に照らされている、日没直後の数時間しか使えない。
今回、Michael Steindorferたちの研究チームは、望遠鏡、検出器、フィルターを組み合わせて、昼間の空に対する観測対象物のコントラストを高めた。また、Steindorferたちは、標的の予測補正値を算出するリアルタイム標的検出ソフトウエアも開発し、これを用いて不正確な予測の補正を行った。Steindorferたちは、昼間の時間帯も宇宙ゴミのレーザー測距を実施でき、全ての人工衛星レーザー測距所における観測可能時間を延長し得ることを実証した。Steindorferたちは、オーストリアのグラーツにある宇宙レーザー測距所での観測時間が1日6時間から季節によっては22時間まで延長される可能性があるという考えを示し、観測時間が大幅に延長されることで、より正確に宇宙ゴミの軌道を予測でき、地球周回軌道にある人工衛星や宇宙ステーションの運用における安全性向上に役立つと考えられると結論付けている。
doi:10.1038/s41467-020-17332-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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