ウイルス学:多数の組織の遺伝学的解析結果は、SARS-CoV-2が鼻の特定の細胞に感染する可能性を示している
Nature Medicine
2020年4月24日
SARS-CoV-2ウイルスの宿主への侵入に関わる遺伝子が、健康なヒトの呼吸器、角膜や腸管の特定の上皮細胞で発現していることを示した論文が、今週Nature Medicine に掲載される。このような遺伝子が、自然免疫に関与する遺伝子と共に鼻の細胞で発現していることが明らかになった。このことはウイルスの当初の感染、伝播と排除に鼻の組織が関わっている可能性を示している。
症候性あるいは無症候性のCOVID-19の呼吸器症状(SARS-CoV-2によって引き起こされる疾患)患者の鼻腔スワブ(鼻腔から拭いとった検体)のウイルス濃度は、咽頭スワブの濃度よりも高いことが以前の研究で示されていて、これは鼻腔が当初の感染と伝播の出入り口である可能性を示している。
ACE2とTMPRSS2は、SARS-CoV-2ウイルスの侵入に関わる2つの分子である。今回、肺生物学ネットワーク(Lung Biological Network)のW Sungnakたちは、これらをコードする遺伝子の発現パターンを明らかにするために、健康なドナーの呼吸器系、網膜、骨格筋、前立腺、脳、皮膚などさまざまな組織から得られたデータの分析を行った。ACE2は、以前の研究で示されているように多数の組織で発現していることが確かめられた。さらに、ACE2はこれまで調べられていなかった組織でもTMPRSS2と共発現していることが確認された。
鼻の胚細胞や繊毛細胞(粘液を産生している)でACE2とTMPRSS2が高発現していることも明らかになり、このような細胞がウイルス感染が起こる最初の部位であり、おそらくはヒト体内やヒト間でのウイルス拡散の源となっている可能性が示された。
著者たちは、今回の結果はCOVID-19のこれからの治療や予防に関わってくるだろうと考えている。
doi:10.1038/s41591-020-0868-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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