【気候変動】1955~2005年の北極温暖化の半分はオゾン層破壊物質が原因だったかもしれない
Nature Climate Change
2020年1月21日
1955~2005年の北極温暖化のおよそ半分はオゾン層破壊物質(ODS)が原因だったという見解を示す論文が掲載される。この新知見は、これまで明らかになっていなかった20世紀の北極の気候変動の原因を浮き彫りにしている。
ODS(上層大気中のオゾン保護層を破壊するハロゲン化合物)は、20世紀にエアロゾル噴霧剤、冷媒、溶剤として使用されていた。ODSの排出量は、1987年のモントリオール議定書以降、抑制され、今ではオゾン層の回復がゆっくりと進んでいる。ところがODSは、強力な温室効果ガスであり、大気中での寿命が長いため、人為的な温室効果を大幅に増大させる可能性がある。
今回、Lorenzo Polvaniたちの研究チームは、気候モデルを用いて、気候温暖化に対するODSの影響の定量化を試みた。その際にPolvaniたちは、1955~2005年に測定されたODSの自然排出量と人為的排出量に基づいた世界とODSとそのオゾンに対する影響がなくなった世界のシミュレーションを行った。この2つの世界の差が、ODSが気候系に及ぼす正味の影響を示している。Polvaniたちは、この期間中の北極温暖化と海氷減少の約半分と全球平均の温暖化の約3分の1がODSによって引き起こされたと推定している。
今回の研究結果は、気候に対するODSの影響に関する新たな見方を示しており、モントリオール議定書によるODSの段階的廃止の継続が、今後の北極温暖化と海氷融解の緩和に役立つことを示唆している。
doi:10.1038/s41558-019-0677-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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