Research Press Release

【医学研究】ヒト肝臓の保存期間を延長させる過冷却法

Nature Biotechnology

2019年9月10日

改良型の過冷却法によって、ヒトの肝臓を-4℃で保存できることを示した論文が掲載される。この手法によれば、ヒトの体外における肝臓の寿命を27時間も延ばすことができる。

移植用臓器の提供不足という問題の根本原因の1つは、臓器を数時間以上保存できる技術がないことである。現在の標準的な+4℃での保存では、肝臓は12時間までしか保つことができない。Korkut Uygunたちは以前、ラットの肝臓を過冷却して凍らせずに-6℃で保存すると、保存期間を延ばせることを明らかにしている。しかし、この過冷却法をヒトの臓器に拡張するには、いくつかの要因が制約となる。

今回、Reinier de Vries、Shannon Tessier、Korkut Uygunたちは、ヒトの肝臓の凍結を防げる改良型過冷却法を開発した。彼らは、過冷却により肝臓を-4℃で保存することによって、提供された肝臓の寿命を、現在の保存手法に比べて27時間も延ばすことに成功した。そして、肝臓を過冷却から回復させるために、室温機械潅流法、すなわち機械によって約20℃で肝臓に酸素と栄養素を絶えず循環させる方法を利用した。すると、肝臓の生存力は過冷却の前後で変化せず、過冷却した肝臓は模擬移植のストレスにも耐えた。

彼らは、医療機関での0℃以下での臓器保存に、この研究が役立つだろうと述べている。ただし、まず大型の動物モデルにおいて、過冷却した肝臓移植を実施し、長期の生存実験を行う必要があるだろう。

doi:10.1038/s41587-019-0223-y

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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