【微生物学】アタカマ砂漠の微生物が火星の生命体に関する手掛かりに
Scientific Reports
2019年8月23日
火星表面の環境に似ていることでよく知られたアタカマ砂漠(チリ北部)で行われた調査研究によれば、火星の微生物は、風で運ばれる塵粒子によって火星上を移動している可能性があるという。この新知見を発表する論文が今週掲載される。
今回、Armando Azua-Bustosたちの研究グループは、微生物が風で運ばれる塵粒子とともにアタカマ砂漠を移動できるかどうかを調査した。その目的は、アタカマ砂漠の微生物がどこで生まれたのかを明らかにすることであり、これは、極限環境に生息する微生物にとって重要な意味を持つ可能性がある。
今回、Armando Azua-Bustosたちの研究グループは、微生物が風で運ばれる塵粒子とともにアタカマ砂漠を移動できるかどうかを調査した。その目的は、アタカマ砂漠の微生物がどこで生まれたのかを明らかにすることであり、これは、極限環境に生息する微生物にとって重要な意味を持つ可能性がある。
この研究グループは、アタカマ砂漠の超乾燥コア地帯を横断する2つの地域にそれぞれ3か所のサンプリング地点を設定して、細菌23種と菌類8種の試料を採集した。この超乾燥コア地帯は、極度の乾燥気候に加えて、高塩分/高酸化土壌が存在し、紫外線量が極めて多いことが知られている。この2つの地域の両方で採集されたのはわずか3種で、アタカマ砂漠では、地域ごとに異なる大気浮遊微生物の生態系が存在していることが示唆された。採集された試料から特定された細菌と菌類には、最初は水生環境中の細菌として論文報告されたOceanobacillus oncorhynchiと、植物から単離されたBacillus simplexが含まれていた。こうした観察結果は、これらの微生物が太平洋とアタカマ砂漠の海岸山脈から超乾燥コア地帯に到達した可能性を示している。
Azua-Bustosたちは、午前中に採集された微生物細胞が近隣地域から到来した傾向があるのに対し、午後になると、遠隔地から海洋エアロゾルと塵粒子に付着した微生物が風に運ばれてきたことを発見した。この新知見は、地球上で最も乾燥し、紫外線量の多い砂漠を微生物が効率的に移動できることを示唆している。また、火星に存在している可能性のある微生物も同じような方法で、その分布を拡大させている可能性があるとAzua-Bustosたちは推論している。
doi:10.1038/s41598-019-47394-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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