地球近傍小惑星「ベンヌ」の初期観測結果
Nature
2019年3月20日
地球近傍小惑星ベンヌ(101955 Bennu)の地表の特徴が予想に反するものだったことを報告する計7編の論文が、今週、Nature、Nature Astronomy、Nature Geoscience、Nature Communicationsに掲載される。この知見により、地球からのレーダー観測と光度曲線観測の結果の一部が確認されたが、新たに報告された地表の特徴からは、ベンヌの起源に関する手掛かりがもたらされ、ベンヌが予想以上に古い天体である可能性が示唆されている。
米国NASAの宇宙探査機OSIRIS-REx(Origins, Spectral Interpretation, Resource Identification, and Security-Regolith Explorer)は、この惑星の特徴を解析し、地表から試料を持ち帰るべく、2018年12月3日にベンヌに到達した。ベンヌは、炭素を多く含む水和物を地球にもたらした可能性があるとされる。小惑星と彗星は、太陽系の形成の際に残った残骸であるため、ベンヌの寿命期間中に生成された地表、形状、動力学的特性に符号化された情報が、太陽系進化のさまざまな段階に関する手掛かりをもたらす可能性がある。
OSIRIS-RExに搭載された観測装置による初期の観測から、ベンヌに水和物が広範かつ大量に存在することが確認されている。また、巨礫が数多く存在しているという予想外の観測結果も得られた。小型のクレーターがなく、地表の外観が不均一といった特徴からは、ベンヌの地表に、さまざまな時代に由来する特徴の異なった領域(例えば、ベンヌの母天体の残骸や、最近の地質活動の徴候)が混在していることが示唆される。著者たちは、ベンヌの推定年齢が1億~10億年と予想以上に古く、主小惑星帯で生まれた可能性が非常に高いという考えを示している。
doi:10.1038/s41561-019-0326-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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