50歳以上の成人のテレビ視聴時間と記憶減退の関連性
Scientific Reports
2019年3月1日
50歳以上の成人の場合、テレビを1日当たり3時間半以上視聴することが、言語記憶の減退と関連する可能性があることを示した論文が、今週掲載される。
今回、Daisy FancourtとAndrew Steptoeは、テレビの視聴とその6年後の言語記憶(単語と言語の記憶)の減退が関連するのかどうかを調べた。この研究では、英国縦断的高齢化調査(English Longitudinal Study of Aging;ELSA)のデータが用いられた。ELSAは、50歳以上の成人を対象とした全国代表研究で、3662人が参加している。調査の結果、テレビを1日当たり3時間半以上視聴することが、その後の6年間の言語記憶の減退と関連することが分かった。この関連は、座っている時間とは無関係と考えられている。先行研究の大半は、テレビの視聴を座って行う行動の代理指標と考えていた。
今回の研究では、テレビの視聴と言語記憶の減退との関連性を説明できるものが検討された。著者たちは、認知機能の保全に寄与する可能性のある活動(例えば読書)のための時間が、テレビの視聴によって減るからだと考えている。同じように画面を使っているが、テレビの視聴よりもインタラクティブな活動(例えば、ビデオゲームやインターネットの利用)は、問題解決能力の向上など、認知機能にとって有益なことがある。テレビの視聴は、注意力が求められるが受動的な行動であるために、認知ストレスがかかる場合があり、これが記憶の減退に寄与している可能性があると著者たちは考えている。
doi:10.1038/s41598-019-39354-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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