最上位の大型サメの個体数が過去半世紀にわたり減り続けている
Communications Biology
2018年12月13日
オーストラリア東海岸沖に生息するサメの個体数が過去55年にわたって減り続けており、規模の回復を示す証拠がほとんど見られないことを報告する論文が、今週Communications Biology に掲載される。この知見は、サメの規制プログラムと保全活動にとって重要な意味を持つ可能性がある。
1962年に創設されたQueensland Shark Control Program(QSCP)は、ヒトとサメの危険な相互作用を最小限に抑えることを目的としたサメ規制プログラムである。現在、このプログラムの適用対象はオーストラリアの海岸線1760キロメートルに及んでおり、これまでに約5万匹のサメが捕獲された。しかし、サメ規制プログラムが海洋生態系に及ぼす長期的影響については分かっていない。
今回、George Roffたちの研究グループは、QSCP で55年にわたって毎日収集された4つの大型サメの分類群(シュモクザメ、メジロザメ、イタチザメ、ホホジロザメ)のデータを解析した。その結果、これらのサメの個体数が大幅に減少しており、とりわけシュモクザメとホホジロザメの減少率は92%に達していることが判明した。また、このデータからは、サメの成体が小型化し、個体群自体が脆弱になっていることも分かった。さらにRoffたちは、サメの個体数減少の原因として最も可能性の高いのが乱獲であることも明らかにした。
近年クイーンズランド州とニューサウスウェールズ州では、何もしていないのにサメに攻撃されたという事例が増えているが、RoffたちによるQSCPのデータの解析結果から、一般的な認識に反し、その原因はサメの個体数の回復ではないという結論が示唆されている。今回のデータは、サメの個体数が過去の基準値と比べて大幅に減少した時に、ヒトとサメの相互作用が見かけ上増えることを示しているのだ。
doi:10.1038/s42003-018-0233-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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