【医学研究】乳がん手術中に腫瘍縁をリアルタイムで評価する方法
Nature Communications
2018年9月19日
蛍光トレーサーを用いて乳がん手術中に腫瘍縁を検出する方法が、小規模臨床試験で評価され、これについて報告する論文が今週掲載される。この試験の結果、ベバシズマブ-800CWという蛍光トレーサーの安全性が認められ、これによって乳がん患者の腫瘍縁の検出率が著しく向上することが示されている。
がんの切除手術では、外科医は目視検査と触診(指や手の感覚による検診方法)によって腫瘍縁を検出しているが、これらの方法は正確さに欠ける。蛍光トレーサーは、がん細胞に送り込むことができ、臨床試験が行われているが、蛍光トレーサーの有効性を判定するための標準化方法がない。また、現在の方法では術中モニタリングを実施できず、例えば、時間のかかる組織切片の処理や手術中にリアルタイムで使用できない技術(コンピューター断層撮影法や磁気共鳴画像法など)が必要となる。
今回、Marjory Koller、Gooitzen van Damたちの研究グループは、26人の乳がん患者の手術中にベバシズマブ-800CWを使用し、その有効性を評価するための用量漸増臨床試験を実施した結果を明らかにした。このベバシズマブ-800CWを使用する方法は、手術室の現行ワークフローに合わせて設計されており、腫瘍縁をリアルタイムで検出できるようになっている。
今回の知見から、蛍光イメージングの安全性が明らかになり、切除断端における腫瘍の術中検出率が88%上昇した。ただし、この技術が乳房温存手術における切除断端陽性(切除された組織の外縁部にがん細胞が存在している状態)の件数を減らして術後の再手術率が低下するかを見極めるためには、さらなる研究が必要と思われる。
doi:10.1038/s41467-018-05727-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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