【創薬】新たな抗生物質としての可能性を秘めた物質
Nature Communications
2018年9月5日
抗真菌性化合物であるアルボマイシンδ2が、有望な抗生物質候補として同定されたことを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究では、実験室環境でアルボマイシンδ2を効率よく得る方法が示されており、また、培養細胞中のさまざまな細菌に対するアルボマイシンδ2の活性が調べられている。
抗生物質は、化学的に精巧な構造を有する天然物質であることが通例だが、そのために人工的な合成(実験室内で全く新たに作製すること)が難しい。細菌は、抗生物質への曝露の後、その抗生物質への耐性を獲得することができるため、新規抗菌化合物の探索が絶えず行われている。
今回、Yun Heたちの研究グループは、抗真菌性化合物の1種で、抗菌性を有することがすでに明らかになっているアルボマイシンを合成する技術について報告している。今回の研究で、Heたちは、抗生物質活性を調べるために十分な量のアルボマイシンを合成することに成功した。そのうちのアルボマイシンδ2は、患者から単離され細胞中で培養されたさまざまな細菌株(大腸菌、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌を含む)に対する抗菌性試験の結果が良好だった。特筆すべきは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)分離株に対する抗菌性試験において、アルボマイシンδ2の抗菌性が、ペニシリンを含む数種類の確立された抗生物質の抗菌性を上回ったことだ。
アルボマイシンδ2を細菌感染症の治療薬として用いる場合の安全性と有効性を見極めるためには、さらなる試験が必要とされる。
doi:10.1038/s41467-018-05821-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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