【ウイルス学】チクングニアウイルスの侵入受容体が同定される
Nature
2018年5月17日
チクングニアウイルス(CHIKV)が細胞に感染する際に用いる細胞表面受容体が同定されたことを報告する論文が、今週掲載される。
関節炎を引き起こすアルファウイルス属(CHIKVもこの1種)は、エンベロープに包まれたRNAウイルスの一群で、蚊を介してヒトに伝播し、急性あるいは慢性の筋骨格疾患を引き起こす。しかし、CHIKVが細胞に侵入する際に必要な因子については、解明が進んでいない。
今回、Michael Diamondたちの研究グループは、ゲノム規模のスクリーニングを行って、CHIKV感染に必要と考えられる宿主側の因子を探索した。その結果、細胞接着分子Mxra8タンパク質が同定された。Mxra8は、侵入メディエーターの1種で、哺乳類、鳥類、両生類が保有している。今回実施された室内実験で、Mxra8をコードするヒト遺伝子とマウス遺伝子を編集したところ、CHIKVの細胞感染能力が低下した。また、Mxra8が他のアルファウイルス(マヤロウイルス、ロスリバーウイルス、オニョンニョンウイルスなど)の感染に必要なことも判明した。さらに、マウスモデルに抗Mxra8遮断抗体を投与したところ、CHIKVやオニョンニョンウイルスへの感染と、それに伴う足のむくみが抑えられた。
Mxra8とCHIKVの結合機構を正確に解明するにはさらなる研究が必要だが、こうした研究が、複数の新興アルファウイルスを原因とする疾患の治療薬の基盤となる可能性があるとDiamondたちは考えている。
doi:10.1038/s41586-018-0121-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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