【医学研究】治療用ペプチドを送達する新しい方法
Nature Communications
2018年4月11日
T細胞を使ってホルモンを送達する新しい方法がマウスの研究で実証されたことを報告する論文が、今週掲載される。この研究から、今回の方法が腎疾患のマウスモデルにおける貧血の症状を軽減する上で有効なことが明らかになった。
ホルモン欠乏症の患者の場合、組換えタンパク質を体内に送達することが必要だが、このタンパク質は製造コストが高く、繰り返し注射をして投与する必要がある。そうしたホルモンの一例が、赤血球の産生を調節するエリスロポエチン(EPO)だ。過去の動物モデルの研究では、ウイルスを使ってEPOを送達する方法が用いられたが、この方法では、免疫応答が生じることがあり、また、EPOの産生を十分に制御できないという欠点があった。これとは別に、Bリンパ球でEPOが産生されるように修飾した細胞をトランスジェニックマウスからEPO欠乏症のマウスに移植するという手法も用いられてきた。
今回、Matthew Wilsonたちの研究グループは、ウイルスを用いない方法でT細胞を直接修飾し、これによってトランスジェニック生物を用いたEPOの産生が必要なくなった。修飾した細胞を、貧血症状を示す腎疾患のマウスモデルに移植した結果、EPOの産生を誘導することに成功し、マウスにおける赤血球産生量の増加が最大20週間続いた。また、Wilsonたちは、T細胞の移植とEPOの発現をワクチン接種によって促進できることも実証した。
以上の結果は、T細胞がEPOの送達に適切な系であることを示しており、別の疾患を治療するための他のペプチドの送達にも利用できることを示唆している。
doi:10.1038/s41467-018-03787-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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