人類の顔の進化で眉ができあがった
Nature Ecology & Evolution
2018年4月10日
初期人類の眉の下の突出した隆起部は社会的地位や攻撃性を示しており、それらがさらに、変化が大きく表情豊かな現生人類の眉に取って代わられたのではないかとする仮説を示した論文が、今週掲載される。これは、眉弓が頭蓋内で構造的な役割を果たしていたとする従来の仮説からの大転換である。
現生人類は、平滑で垂直な前頭部と、コミュニケーションに用いる眉を有している。一方、初期人類は眉弓が顕著に太く、骨張っている。過去の研究では、眉弓は咬合や咀嚼の応力を防いでいるのではないか、あるいは頭蓋の2つの異なる要素(眼窩と脳頭蓋)が合わさって生じたのではないか、と示唆されていた。
Ricardo Godhinoたちは、現在のザンビアで出土したホモ・ハイデルベルゲンシス(Homo heidelbergensis;30万~12万5000年前のものと推定)の化石頭蓋をデジタル再現し、眉弓の大きさを変化させて、頭蓋に異なる咬合圧を与える実験を行った。その結果、化石の眉弓は眼窩と頭蓋との分離を説明するのに必要なサイズよりもはるかに大きく、この大きな眉弓は摂食時の頭蓋の保護にほとんど役に立っていないことが分かった。
Godhinoたちは、眉弓には物理的な役割ではなく社会的な役割があったのではないかと考えている。他の霊長類でも、同様の頭蓋の発達が情報伝達に利用されており、例えば、ヒヒに似たマンドリルは骨張ったカラフルな鼻口部を有し、これによって雄は優位性を、雌は生殖状態を表す。Godhinoたちは、初期人類の眉弓は、もしかすると社会的優位性や攻撃性を示す不変のシグナルとして、マンドリルの鼻口部と同様の役割を果たしていたのではないかと論じている。人類の社会性が強まるにつれて眉弓は平板化し、代わりに、視認性と可動性に優れて感情をさらに細かく柔軟に示すことができる眉の発達が可能になった。
doi:10.1038/s41559-018-0528-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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