Research Press Release
【ゲノミクス】柑橘類の進化
Nature
2018年2月8日
ありふれた植物分類群の1つであるミカン属の起源について報告する論文が、今週掲載される。この論文では、ミカン属について、現在の分類学的思考に異議を唱える新たな進化の枠組みが提示されている。
ミカン属の樹木は、世界で最も広範に栽培されている果樹だが、ミカン属の起源と歴史は明らかになっていない。今回の研究で、Guohong Albert Wuたちの研究グループは、オーストラリアンフィンガーライムからクレオパトラマンダリンに至る60種の柑橘類のゲノム塩基配列解析を行った。そのうちの30種は、今回初めて塩基配列解析が行われた。Wuたちは、現存する柑橘類の樹木は、少なくとも10種の柑橘類の天然種に由来していることを報告している。ミカン属は、800~600万年前の中新世後期に多様化し、東南アジアに急速に広がったが、こうした変遷はアジアの夏季モンスーンの弱化と相関している。オーストラリアの柑橘類が多様化したのは、それよりもかなり後の約400万年前のことで、柑橘類がアジアとオーストラリアの分布境界線であるウォレス線を超えたのもその頃だった。
また、Wuたちは、柑橘類の野生祖先種に由来する市販品種の栽培化についても調べ、大粒のグレープフルーツに似たザボンという柑橘類の天然種の遺伝子が、マンダリン種に寄与した可能性のあることを明らかにした。
doi:10.1038/nature25447
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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